研究課題
立山(弥陀ヶ原)火山は飛騨山脈に位置する活火山で、現在は地獄谷と呼ばれる場所で活発な噴気・温泉活動が行われている。地獄谷の直下には水蒸気爆発の発生場である火山体浅部熱水系が発達していることが期待される。火山ガスは、深いマグマ溜まりから地表に達するまでの移動速度が速いため、その成分比は火山活動の変化をいち早く反映する。従って、火山活動をモニタリングする上で重要な観測項目の1つであると考えるが、立山地獄谷の火山ガスに関する学術的報告は、水谷ほか(2000)を最後に行われていない。そこで、立山地獄谷の熱水系の構造をより良く理解し、現在の火山活動を評価するために、温泉水に加えて火山ガスの採取を2016年9月に行った。分析の結果、地獄谷の中でも活発な噴気活動をしている場所でHClを含む火山ガスが採取された。水谷ほか(2000)で分析された火山ガスよりもHCl濃度の大きなガスも見つかった。また、3He/4Heは高い値を示し、大半のHeはマグマ起源であることがわかった。温泉水との関係では、Cl/SO4が小さな値を示す温泉水(SO4-type)は、その周辺で採取された火山ガスのSO2/H2Sが小さく、H2S主体の火山ガスにより形成されたと考えられ、δ34SSO4の値も低かった。一方で、HClを含む火山ガスのSO2/H2Sは大きく、周囲では活発な地熱兆候を観察することができる。その周辺で採取された温泉水のイオン濃度は大きな値を示し、水の同位体比は地獄谷の中で最も高い値を示した。温泉水成分の経年変化をみると、いくつかの温泉水はCl/SO4の時間変化が大きいことがわかった。これは、浅部に存在する気液二相の流体の温度や気相の割合の変化を反映していると考えられ、キャップロック直下の熱水系の状態を推定する指標になりうる。
2: おおむね順調に進展している
火山ガスの調査分析は全てデータを揃えることができ、また良好なデータをとることができた。温泉水の結果を含め、キャップ構造直下の変化をとらえることができ、火山活動の評価に使用できる。立山地獄谷の熱水系構造を得ることが出来たので、今後は数値計算に早く手を付けたい。
本年度は水蒸気爆発を2015年に発生した箱根大涌谷でAMT観測調査が予定され、立山地獄谷との比較研究を行う。観測点は28点予定しており、比抵抗構造の3次元解析を行う。実際に水蒸気爆発が発生した箱根大涌谷の熱水系構造は、今回の電磁気調査が初めてであり、貴重なデータになるはずだ。数値計算はソフトを整えることが出来たため、今後は実際に計算をまわしていく方針である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Jounal of Volcanology and Geothermal Research
巻: 325 ページ: 15-26
doi:10.1016/j.jvolgeores.2016.06.010