研究課題/領域番号 |
16J00819
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡 博史 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 光電子集積 / GeSn-on-insulator / 薄膜トランジスタ |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画に従い、高移動度GeSn-on-insulatorトランジスタおよびGeSn発光・受光デバイスの作製と集積化に関する検討を行い、以下の成果を得た。横方向液相成長法を用いて、Si基板上に絶縁膜を介して高品質な引張歪み単結晶GeSn細線を形成することに成功した。バックゲートGeSnトランジスタを作製し、従来のGe薄膜トランジスタ(TFT)を上回る正孔移動度290 cm2/Vsを達成すると共に、フォトルミネッセンス測定によりバンド構造変調に起因した直接遷移発光増大を確認した。 次に本技術を応用し、透明基板上でのGeSn光電子集積に取り組んだ。アモルファスGeSn細線の局所溶融により結晶シードを用いることなく横方向液相成長が進行することを見出し、透明基板上に単結晶GeSn細線を形成することに成功した。さらにGeSnと基板材料との熱膨張係数差を利用し、石英ガラス基板上GeSn細線において0.6%の高い引張歪みを実現し、著しい発光効率の増大を確認した。また石英基板上単結晶GeSn細線でTFTを作製し、バルクSi基板上に作製したGeSn p-MOSFETに匹敵する正孔移動度423 cm2/Vsを達成した。以上の研究成果はApplied Physics Letters誌に掲載された他、国際会議IEEE International Electron Devices Meetingにおいて発表を行った。 さらに石英基板上単結晶GeSn細線へのPイオン注入によるn型ドーピングを試み、高品質なn+/p接合を形成した。当該技術を用いて透明基板上GeSn n+/p接合によるフォトディテクター動作および室温でのエレクトロルミネッセンスを実現し、高移動度GeSn nチャネルTFTの作製にも成功した。これらの研究成果は国際会議Symposia on VLSI Technologyに採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はSi基板上において高い発光効率を有する高移動度GeSn電子デバイスを実証し、光電子集積に向けた基幹技術を確立すると共に、本技術を透明基板上に展開することで世界に先駆けて高移動度GeSn pおよびnチャネルTFTの作製と室温でのエレクトロルミネッセンス観測に成功しており、当初の計画以上の成果が得られている。また、これらの研究成果はApplied Physics Letters誌に掲載された他、半導体デバイス技術に関する代表的な国際会議であるIEEE International Electron Devices MeetingおよびSymposia on VLSI Technologyに採択されている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はIV族材料による光電子集積回路の実用化に向け、本技術により形成した透明基板上単結晶GeSn層を用いて光通信・近赤外センシングに利用可能な高効率発光・受光デバイスの作製を行う。また、フレキシブルエレクトロニクスへの展開も視野に入れた新たな局所溶融手法の検討も行う。
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