研究課題/領域番号 |
16J00865
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野里 宏樹 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 恒星 / 大質量星 / Wolf-Rayet星 / 食連星 / 近接連星 / 恒星進化 / 質量放出 |
研究実績の概要 |
大質量星の進化には質量放出が大きな影響を及ぼす。従来、強い放射圧が大質量星の質量放出を引き起こす主な要因として考えられてきた。しかしながら、近年、放射圧により引き起こされる質量放出の量が従来考えられていたものよりも小さいことがわかってきた。その結果として、観測されている各進化段階の大質量星の個数の分布やそれぞれの種類の超新星爆発の割合が再現できないことが問題となっている。その不足している質量放出量を増大させる機構として考えられているものの一つが近接連星系の中の重力相互作用による質量のはぎ取りである。
この仮説を検証するために、2016年度の前半は約 3ヶ月半にわたって南アフリカ天文台・サザーランド観測所の IRSF 望遠鏡を用いて、大質量星の末期の進化段階である Wolf-Rayet 星の明るさをモニターし、食の有無を調べることにより、連星の割合を調べるという観測を行った。帰国後は取得した大量のデータの解析を行った。また、2016年度の後半には岡山天体物理観測所でファーストライトを迎えた赤外線望遠鏡 IR-TMT を用いて、北半球でもデータの取得を開始した。こちらのデータについてもデータを取得次第、解析を行っている。
現在までの結果を見ると、新たな Wolf-Rayet 星の食連星、またはその候補はほとんど発見することができていない。今後は、この結果から大質量星進化への近接連星系の影響を議論していく。現在までの結果の速報は国内の研究会で口頭・ポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度の 5-7月の南アフリカ天文台・サザーランド観測所の天気は例年に比べて非常に悪く、南アフリカ天文台の研究者が最近の 10数年のなかでも最も晴れないと嘆くほどであった。それに加えて、IRSF 望遠鏡に取り付けられている SIRIUS カメラのトラブルも 6月に発生し、快晴であっても観測できない期間が存在した。そのために、予定していた量の半分程度の観測データしか得ることができなかった。
また、観測データが大量であることとデータを解析する際のソフトのバグの対処に想定以上の時間がかかってしまったために、データの解析を予定通りに進めることができなかった。そのために、2016年度には査読付きの学術論文として発表することはできなかった。しかしながら、徐々に結果が得られてきており、その結果の速報を国内の研究会で口頭・ポスター発表することができているため、これまでのところやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き Wolf-Rayet 星の光度変化をモニターし、食の有無を調べる観測を継続する。また、現在までに得られている結果から近接連星の割合を評価し、その結果をまとめて査読付きの学術論文として投稿を行う。
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