研究課題/領域番号 |
16J00889
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
榎園 誠 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | ファイバー曲面 / スロープ / 2次元特異点 / ミルナーファイバー / 平面曲線 / 符号数 |
研究実績の概要 |
今年度は主に次の 2 つの研究を行った. (1)種数4の非特異射影曲線は超楕円的なもの,トリゴナル曲線でそのトリゴナルペンシルが唯一なもの(Eisenbud--Harris特殊),トリゴナルペンシルが2つ存在するもの(Eisenbud--Harris一般)の3タイプに分類できる.一般に種数gの超楕円曲線を一般ファイバーに持つファイバー曲面に対しては,スロープの下限を4(g-1)/gとするスロープ等式が知られていた.また,一般ファイバーが Eisenbud--Harris 一般な種数 4 のファイバー曲面に対しても,スロープの下限を7/2とするスロープ 等式が知られていた.筆者はまだスロープ等式が知られていなかった一般ファイバーが eisenbud--Harris 特殊な種数 4 のファイバー曲面に対し,スロープの下限を24/7とするスロープ等式を確立した.この結果は「Slope equality of Eisenbud--Harris general fibrations of genus 4」にまとめた. (2)筆者は昨年度の研究で,一般ファイバーが平面曲線であるファイバー曲面に対しスロープ等式を確立し,その応用として2次元超曲面特異点の幾何種数とミルナー数に関するダーフィー型の不等式を証明した.今年度はこれらの一般化として,一般ファイバーが射影空間の中の完全交叉な曲線であるファイバー曲面に対し,条件付きでスロープの下限を与える不等式を証明し,その応用として2次元完全交叉特異点のミルナーファイバーの符号数が負になるだろうというDurfeeの負値性予想が正しいことを示した.この結果は論文「Durfee-type inequality for complete intersection surface singularities」 にまとめた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は種数4のEisenbud--Harris特殊なファイバー曲面のスロープ等式や完全交叉な2次元特異点に関するダーフィー型不等式などいくつかの研究成果を上げることが出来た.特に後者の結果は本研究課題であるファイバー曲面のスロープ不等式の一つの応用であるが,2次元特異点への予期せぬ結果であり,Durfeeの負値性予想を解決する大きな結果となった.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては,まずは昨年度得られた結果である平面曲線束のスロープ等式の高次元化である.一般ファイバーが超曲面であるファイバー多様体に対しスロープの不等式が成り立つことを示し,不変量を局所化して退化ファイバーに対し堀川指数を定義したい.また今年度得られた2次元完全交叉特異点に対するダーフィー型不等式の高次元化にも取り組みたい.
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