研究課題
卵管での配偶子と初期胚輸送機構を明らかにするために卵管収縮に着目した。今年度は次の4項目に関して実験を行った。1. 卵管内精子の遡上に対する卵管収縮の役割: マウス卵管内での精子の挙動を可視化するために、精子頭部先体およびミトコンドリアがそれぞれ GFPとRFPで蛍光ラベルされたトランスジェニックマウスを用いて、卵管内精子遡上のライブイメージングを行った。その結果、卵管峡部では卵管収縮によって生じた卵管液の流れに沿って多くの精子が運ばれている様子が観察された。一方、収縮抑制剤である臭化プロフィニウムを用いて卵管収縮を抑制すると精子は峡部に滞留し、遡上できないことが分かった。このことから、卵管収縮は精子が卵子へ到達し受精するために重要な役割を担うことが示唆された。本研究の研究成果は生殖分野で国際的に評価されているBiology of Reproductionに掲載された。2. 卵管収縮による精子選別機構の解明: 卵管内精子の遡上が卵管収縮によって選別されているかを検討するため、形態が異常または運動性のない精子の卵管内での挙動とその受精率を調べた。3. 卵管収縮による初期胚輸送機構の解明: 卵管収縮により初期胚が卵管内をどのように移動するかを明らかにするために、交配後経過時間毎にマウスから卵管を摘出し初期胚の局在を観察した。4. 新規卵管収縮因子の探索: 卵管内精子の遡上と初期胚輸送には卵管収縮が重要な役割を果たしていることが示唆されているが、実際にどのような分子メカニズムで収縮が制御されているかは未だ不明である。そこで精子の遡上が行われる排卵時のマウス卵管から新規卵管収縮因子の同定を試みている。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に準じて、4項目の研究を行った。受精の際の卵管収縮の役割に関してはほぼ十分な成果をあげたと判断できるが、精子選別機構の解析は期待通りに進展していない。初期胚移動の解析もほぼ順調に成果を得ているが、卵管収縮因子の探索は相当な困難があるものと推測している。
1. 卵管移動から子宮到達までの一連の現象が卵管収縮によってどのように制御されているのかについて解明していく予定である。2. 卵管収縮を評価するために卵管上皮細胞を用いた収縮アッセイ系を確立し、卵管抽出液の収縮能力の有無を検討している。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
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