研究課題/領域番号 |
16J01021
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小倉 大典 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 超伝導 / 強相関電子系 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
本年度はまず,銅酸化物におけるdp準位差が反強磁性と超伝導の競合に及ぼす影響について,単位胞内に複数サイトがある場合に一般化された二体自己無撞着法を用いて詳細に調べ、さらに、当初の研究計画の予定にあったサイト内の軌道自由度にまで一般化された多軌道に体自己無撞着法の数値計算プログラムの開発を行った.行った解析から,銅酸化物とほかの遷移金属酸化物の物性の差異を理解する上では,強い準粒子繰り込みの効果が不可欠であることを示唆する結果を得た.今後はこうした効果を取り込んだ計算を行うための数値計算プログラムを整備する予定である. また,当初は予定していなかった方向ではあるが、銅酸化物及びそれ以外の遷移金属酸化物における超伝導に関して,二つの大きな成果が得られた.一つは銅酸化物において,通常は銅-酸素の8面体配位を考えるが,頂点酸素をハロゲンで置換した銅酸化物においては,酸素のみの配位の場合に比べて,圧力印加に対して大きく超伝導転移温度が上昇する可能性を示したことである.このことは,アニオン種による結晶場の大きさの違いに起因するものとして自然に理解できる.もう一つは,分散の小さいバンドと大きいバンドが共存する系で,高温超伝導が期待できることを示したことである.また,こうした多バンド系をを実現するための手立てを,第一原理バンド計算と揺らぎ交換近似を組み合わせて議論し,有望な候補物質を複数見出した.これらの成果は新しい高温超伝導体を探索する上で重大な指針を与えたと言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画に関しては,おおむね順調に進行しており,それと並行して上述の二つの大きな成果を得た.特に,新高温超伝導体として有望な候補物質を複数見出すことができ,かつ銅酸化物への圧力効果に関して興味深い知見を得た.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に関しては,二体自己無撞着法の多軌道系への適用及び電子相関効果のより精密な取扱いに着手する.また,銅酸化物に関してはより網羅的な解析を通して,本年度の知見の妥当性を検証する.新高温超伝導体の設計に関しては得られた指針の一般性を検証する意味でも,さらなる候補物質の探索及び高温超伝導の可能性の検討を行う.
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