研究課題/領域番号 |
16J01063
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮田 大資 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 薬物相互作用 / トランスポーター / フェブキソスタット / ABCG2 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
本研究は、「生活習慣病治療に用いられる尿酸降下薬フェブキソスタットがABCG2の阻害を介した薬物相互作用を引き起こすとの仮説の下、被相互作用薬を同定し、その相互作用がもたらす生物学的影響の臨床的重要性を評価する研究」である。研究初年度である平成28年度は、以下の項目に取り組んだ。 ①これまでの研究成果の論文発表:平成28年度までの関連する研究成果を取りまとめて、Frontiers in Pharmacology誌に発表した。本論文では、フェブキソスタットが非常に強力なABCG2阻害剤であることを初めて報告した。 ②マウスを用いたin vivo検証:ロスバスタチンは代表的な生活習慣病である脂質異常症の治療薬であり、その体内動態はABCG2によって制御されていることが知られている。そこで、フェブキソスタットがロスバスタチンの消化管吸収に与える影響をin vivoで調べるため、野生型マウスに、フェブキソスタットを経口投与後、さらにロスバスタチンを経口投与し、ロスバスタチン血中濃度を経時的に測定した。その結果、スルファサラジンの場合と異なり、ロスバスタチンの血中濃度推移についてフェブキソスタット投与群とコントロール群との間に有意な差は認められなかった。以上より、ロスバスタチンの消化管吸収についてヒトとマウスとの間に種差が存在する可能性が考えられた。 ③東京大学医学部附属病院の患者情報収集と解析:ヒトにおけるフェブキソスタットとロスバスタチンとの薬物相互作用の可能性を調べるため、研究代表者が所属する東京大学医学部附属病院の患者情報を収集した。ロスバスタチンを服用中にフェブキソスタットの服用が開始された患者を対象とし、調査対象期間は2011年10月1日から2014年3月31日までとした。条件に該当する患者として、27名のカルテ情報が現時点で得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェブキソスタットによる強力なABCG2阻害活性を論文報告することができた。これは本研究の基盤となる重要な知見である。マウスにおいて、ロスバスタチンの経口吸収に対するフェブキソスタットの影響は確認されていないものの、その原因として想定されるヒトとマウスとにおける種差を検討するための準備は滞りなく進展している。ロスバスタチンのマウス消化管吸収におけるAbcg2の重要性を評価するために必要となるAbcg2欠損マウスの繁殖は現在所属研究室において進行中であり、LC-MS/MSを用いたロスバスタチンの血中濃度の測定系は既に樹立済みである。また、東京大学医学部附属病院の患者のカルテ情報収集も進んでおり、ヒトにおいてロスバスタチンの薬効や副作用発現に対してフェブキソスタットが与える影響を評価する基盤はできつつある。したがって、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、まずロスバスタチンの消化管吸収におけるヒトとマウスとの種差を検討するために、野生型マウスとAbcg2欠損マウスそれぞれにロスバスタチンを経口投与後、経時的にロスバスタチンの血中濃度を測定することで、ロスバスタチンの経口吸収におけるマウスAbcg2の重要性を評価する予定である。 併せて、既にABCG2の基質となることが知られる薬物を対象として、in vitro検討結果などを相互に参照しながら、新たな被相互作用薬物候補の探索を行う。ロスバスタチンの場合と同様にして、野生型マウスに対して各ABCG2基質薬物を経口投与後、対象薬物の血中濃度を測定し、フェブキソスタットの前処理がその消化管吸収に与える影響を調べる予定である。 東京大学医学部附属病院の患者情報解析として、フェブキソスタットがロスバスタチンの薬効や副作用発現に与える影響を検討するために、平成28度に収集したカルテ情報を元に、各患者において、ロスバスタチンの薬効の指標となるLDLコレステロール値および副作用の指標となるクレアチンキナーゼ値をフェブキソスタットの投与前後で比較することを計画している。
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