平成30年度は主に以下の研究を行った。 1.Balmerのテンソル三角幾何学により、テンソル三角圏のテンソルイデアルの分類問題はBalmerスペクトラムと呼ばれる位相空間の構造解析に帰着される。一方ですべての三角圏が良いテンソル構造を持つとは限らず、そのような場合にはテンソル三角幾何学のような強力な理論は知られていない。今年度はテンソル構造を持たない三角圏に対してそのスペクトラムの候補となる位相空間を定義し、実際にあるクラスのthick部分圏を分類した。また、Hopkins-Neeman-Thomasonによる完全導来圏のthick部分圏の分類、高橋氏による特異圏のthick部分圏の分類がこの枠組みで理解できることを示した。 2.スキームXに有限群Gが作用しているとき、Xの完全導来圏には(Deligneの意味での)群作用が定まる。このとき、同変な完全複体のなす三角圏(以下、同変完全導来圏)はXの完全導来圏のテンソル三角圏構造から誘導される自然なテンソル三角圏構造を持つ。本研究において、適切な仮定の下で同変完全導来圏のテンソルイデアルをXのG安定な特殊化閉集合を用いて分類した。この結果はGが自明な場合はHopkins-Neeman-Thomasonの結果を完全に復元し、Xがアファインの場合はBenson-Carlson-Rickardの結果の特殊な場合を含む。残念ながらこの結果はHallによる、あるクラスの代数的スタックの完全導来圏のテンソルイデアルの分類の結果に含まれていることが分かった。
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