研究課題/領域番号 |
16J01165
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梅田 健一 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 周波数変調型原子間力顕微鏡 / 走査型トンネル顕微鏡 / 原子操作 / ナノクラスター |
研究実績の概要 |
昨今の環境・エネルギー問題の解決策として、ナノテクノロジーを基盤技術として用いた周波数変調型原子間力顕微鏡(FM-AFM)および走査型トンネル顕微鏡(STM)に注目が集まっている。本研究室は、室温環境下での超高真空(UHV)のFM-AFM/STM技術を用いた半導体表面上における原子操作や元素種識別といった研究を精力的に行っており、こうした技術に関して世界でトップクラスの知見を有している。本研究では、Si(111)-(7×7)表面上に蒸着を行った金属原子の原子操作およびナノクラスター形成そしてスイッチングの現象解明を目的として行う。 本年度は、主に装置の立ち上げを行うために、以下のようなことを行った。カンチレバーの探針先端を清浄化するためのArスパッタ装置が故障していたため、業者に修理の依頼を行った。カンチレバーホルダーが古いタイプであったため、より剛直に設計された新しいタイプに換装を行った。消耗品であるTiサブリメーションポンプの換装を行った。制御用プログラムがうまく動作しない問題があったため、問題解決を行った。故障した真空計の換装を行った。光干渉計の光ファイバーにも問題が発生したため、問題解決を行った。更に超高真空装置の使い方に慣れることもできた。これにより装置の立ち上げを完成し、FM-AFM/STMを用いてSi(111)-(7×7)の原子分解能像取得を達成した。次年度より、立ち上げを行った装置を用いて本格的に研究を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、おおむね順調に進展している。 本研究が開始した時点では、超高真空装置は使える状態ではなかった。 使用可能な状態にまでに、様々な装置的な問題があったが、1つずつそれらを克服していくことで、装置を立ち上げることに成功した。また、これまで超高真空装置を使った経験がほとんどなかったが、真空引きやベーキング、真空計の使い方、光ファイバーのアライメントの仕方などを練習することでFM-AFM/STMを恒常的に使えるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで本研究室において、金、銀、鉛、スズの元素を用いて金属ナノクラスターの形成が行われている。これらと同じ元素を用いて実験を行っても新しい知見が得られる可能性は低い。そのため、まだ実験が行われていない元素を用いる必要がある。これまでの研究から、室温環境下におけるFM-AFM/STMを用いた金属原子の原子操作は全ての元素に対して行えるものではなく、限られたものでしかできないことが経験的に明らかとなっている。原子と表面の相互作用が強すぎると、探針を用いて探針を操作することができない。逆に相互作用が弱すぎると、原子が高速で表面上を拡散するため、イメージングすることができない。当初は、触媒機能を有する白金を用いて、実験を行う予定だったが、過去の文献を調査したところ、こうした元素は表面との相互作用が強すぎるため、原子操作には不向きであることが分かった。更に調査を進めたところ、銅、ゲルマニウム、パラジウム原子であれば、原子操作が可能であることが分かった。今後はこうした元素を用いて実験を行っていく。
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