研究課題/領域番号 |
16J01191
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
太田 雅 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / 光集積回路 / 多モード干渉 / 論理演算 |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究実施計画は、金属膜上にパターニングされた誘電体導波路に沿って伝播する表面プラズモンを信号キャリアとして用いた、パッシブな干渉を利用する論理演算素子を開発し、その論理演算動作を確認することである。そのために、等価屈折率法に基づいたプラズモニック多モード干渉導波路の設計手法およびCMOS互換プロセスに基づいた素子作製を適用した開発を進めた。具体的には、石英基板に製膜した金膜上に形成した酸化シリコンストライプ導波路の設計を行い、表面プラズモンを信号源とした半加算器を開発した。 はじめに、単一モード導波路上を伝播する表面プラズモン信号と比較して任意の位相遅延を1入力1出力の2モード導波路を介して与える位相調整素子の開発を行った。この位相調整素子は、光回路パターン設計における光路長の調節の簡略化が可能であるために、将来の設計単純化に寄与することが期待できる。続いて、位相調整素子と2入力2出力の多モード干渉導波路とを組み合わせた論理演算素子の基本構造の設計を行った。本構造は、位相調整素子を介して90°の位相遅延を入力信号に与えることで、2つの入力ポートから入力される表面プラズモンが同位相・逆位相で干渉し、それぞれ出力される2つの出力ポートを有する。この基本構造をカスケード接続し、2段目の演算に参照信号を入力することで、半加算器が少なくとも約10 dBのオンオフ比で動作可能であることを解析的に確認した。 続いて、設計結果に基づいて作製した素子について、近接場光顕微鏡を用いて伝播する表面プラズモンの近接場光強度分布を評価した。近接場強度分布から干渉パターンと表面プラズモン信号の入出力強度比を観測することで、少なくとも4.3 dBのオンオフ比でXORとAND演算の同時に処理可能であることを実験的に確認し、表面プラズモンを用いた半加算器の実現可能性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の開発目標であるパッシブ動作可能な表面プラズモン論理演算素子を開発し、その動作を実験的に確認できている。 さらに、平成28年度で実施予定のカスケード接続技術を開発し、2段接続による論理演算の実証に成功しており、論文等で報告している。 これらを勘案し、上記区分の判定とした。
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今後の研究の推進方策 |
パッシブ動作可能な論理演算素子は、信号源の位相差が判明している条件でのみ動作可能であり、カスケード接続数もオンオフ比の観点から制約がある。平成29年度は、非線形屈折率効果を表面プラズモンを用いて高効率で利用することで、複数信号源の位相同期を必要としない論理演算素子を開発し、平成28年度に開発した素子と組み合わせた実用的な論理回路の設計を進める。 さらに、平成30年度に実施予定のTE/TM分割および周波数分割による単一配線における表面プラズモンを介した情報伝送量の増大に向けた基幹素子を開発する。
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