研究課題/領域番号 |
16J01201
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
西村 佳 信州大学, 総合工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ニワトリ / グルカゴン様ペプチド2 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
本研究は、L細胞におけるGLP2の合成から分泌に至る経路の中で、未だアミノ酸の与える影響が不明である“転写”と“分泌”への影響を明らかにすることで、アミノ酸がL細胞のGLP2産生・分泌を刺激するか否かを解明することを目的として行った。
1.初年度は、無タンパク質飼料へのアミノ酸添加がGLP2の前駆体であるプログルカゴン(PG)mRNAの発現量に与える影響を明らかにした。PG mRNA発現細胞は主として陰窩から絨毛基部に集中して観察され、分布パターンについて飼料群間で明白な違いはなかった。しかし、PG mRNA発現細胞の分布密度は、無蛋白質飼料群で対照飼料群と比べ有意に低い値となった。一方で、無蛋白質飼料にメチオニンまたはリジンを投与した群のPG mRNA発現細胞の分布密度は、無蛋白質飼料群よりも有意に高い値を示し、対照飼料群と同程度となった。つまり、メチオニン及びリジンは、ニワトリL細胞のGLP2産生を刺激する因子の一つであることが分かった。この結果は、関連学会(第17回アジア・大洋州畜産学会議、2016年8月)で発表された。
2.続いて、アミノ酸が血中GLP2濃度に与える影響について明らかにした。対照飼料、無蛋白質飼料及びアミノ酸添加無蛋白質飼料を摂取したニワトリ雛の血中GLP2濃度を比較した。その結果、GLP2の血中濃度は、対照群で最も高い値となったが、4群間で多重検定を行ったところ、全ての群間で有意差は見られなかった。つまり、異なる内容の飼料摂取は、基底レベルの血中GLP2濃度に影響を与えないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目標として、アミノ酸がL細胞のPG mRNA発現量及び血中GLP2濃度に与える影響の解析を挙げていた。今回の実験で、メチオニン及びリジンが、ニワトリL細胞のGLP2産生を刺激する因子の一つであると推定するに至った。またこの研究から派生した実験より、ニワトリ回腸におけるL細胞のGLP産生は、分化・増殖の場である陰窩においてほぼ完了し、絨毛上皮では分泌されるのみであることが明らかとなり、L細胞の陰窩-絨毛軸での動態が解明された。この結果は、Domestic Animal Endocrinology誌(IF2.171, Vol 56, 2016年, pp70-74)に掲載された。また、アミノ酸がL細胞のGLP2分泌に与える影響に関して、血中GLP2濃度の解析が完了した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、アミノ酸がL細胞のGLP2分泌に与える影響を、形態学的手法により明らかにする予定である。包埋後免疫電顕法は金粒子により抗原を可視化し、切片上のGLP2を定量することが可能である。この手法により、各飼料群のL細胞内の分泌顆粒に含まれるGLP2の定量化を行う。 また、GLP2の生理作用として小腸吸収上皮への成長効果が知られることから、アミノ酸摂取による、GLP2分泌を介した小腸吸収上皮への成長効果を評価する予定である。各飼料群の小腸絨毛丈、絨毛幅及び吸収上皮細胞の細胞分布密度を画像解析装置にて解析し、血中GLP2分泌量との相関を調べる。
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