本研究では、細胞分裂における染色体分離過程の詳細なメカニズム解明を目的とし、セントロメア由来非コードRNA(セントロメアRNA)の機能解析を行ってきた。昨年度までに、セントロメアRNAが細胞周期依存的なRNP複合体形成を通じて、正確な染色体分離を制御している可能性を見出していた。 本年度はまず、「年次計画①:間期RNP複合体の意義解明」を目的とし、間期複合体因子DHX38とセントロメアRNA、または分裂期複合体因子RBMXの関係について解析を行った。その結果、間期RNP複合体は、セントロメアRNAおよび分裂期複合体の量やクロマチン局在には影響を与えないことを明らかにした。 次に、「年次計画②:コヒーシン制御モデルの検証」を目的として、分裂期複合体因子として既に同定済みのAurora BとRBMXに注目した。各因子が形成する2種の複合体の関係について解析を試み、それぞれが別々の複合体を形成するにも関わらず、RBMXがAurora Bのセントロメア局在とキナーゼ活性に重要であるという興味深い結果を得た。また、セントロメアRNAがRBMXとコヒーシン制御因子Sororinのタンパク質量維持に関与する一方で、セントロメアコヒーシン保護因子Sgo1のタンパク質はその量の維持にセントロメアRNAを必要とせず、セントロメアRNAが特異的な制御を示すことが明らかとなった。さらに、セントロメアRNAがRBMXのクロマチン局在制御には関与しないこと、SororinもセントロメアRNAと同じくRBMXタンパク質量維持に重要であることを見出し、セントロメアRNAによるコヒーシン制御を介した染色体分離機構の詳細について初めて明らかにした。年次計画②の解析結果については、RBMXを含むセントロメアRNP複合体による染色体分離制御機構としてGenes to Cell誌に報告した。
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