研究課題/領域番号 |
16J01368
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小川 知弘 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
キーワード | 金属錯体 / 光物性 / ソフトマテリアル / イオン液体 |
研究実績の概要 |
発光特性を有する新規な液体状化合物の合成及び物性探求へ向けて、その基盤となる配位子及び金属錯体の合成を主眼として研究を進展させた。特に新規な発光性亜鉛錯体のための配位子を設計及び合成に取り組んだ。当初の分子設計では、金属に単純な構造を有する有機配位子をもちいることで、金属錯体を合成することを目標としていたが、得られる金属錯体は非常に発光性に乏しく、また、カウンターイオンとして導入していたアニオンにより多核クラスターが形成され、系の中で生成する化合物が複雑になる傾向がみられた。この様に当初の計画の化合物では合成及び物性制御に問題点があることがわかり、配位子の設計の変更に取り組んだ。特に、光物性と配位官能基を合理的に設計する点において主たる問題があっため、より設計性を簡素化するためにこれまでに良く研究がなされている電荷移動遷移による遅延蛍光の利用を検討した。特にドナーアクセプター能のある官能基及び分子骨格を配位子に付与し、配位内での電荷移動遷移を利用することに着目した。そこで良く用いられるドナー及びアクセプター性及び配位官能基を有する配位子を新規に種々設計し、その合成に着手した。得られた配位子では電荷移動性の高い場合によく観測される溶媒極性に依存したブロードな発光スペクトルを青色から黄色まで幅広く示す。また、その亜鉛錯体の合成も同時に試みており、各種条件検討の結果、高い収率で亜鉛錯体の合成に成功した。また、これらの亜鉛錯体においても配位子と類似したブロードな形状の発光スペクトルが得られており、電荷移動遷移状態からの発光であると推察でき、現在詳細に発光特性を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、液体状発光性金属錯体を目指した化合物のモデルとなる金属錯体及びその配位子を設計し合成に成功している。当初目的としていた分子設計に問題がみられたため分子構造は大きく変更となったが、目的とする物性へ向けた変更であり、配位子及び金属錯体は順調に得られていることからも次年度内に十分な結果が得られると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
1)新規発光性亜鉛錯体の理論的研究 得られた配位子及び金属錯体において、理論計算を用いてその励起状態の特性を検討する。その結果から、配位子への置換基修飾を行い、発光エネルギーの制御とその特性を詳細に検討する。 2)液体状化合物への展開 得られた金属錯体を用いて液体状化合物へむけて、カウンターイオンの導入もしくは配位子修飾を用いて、結晶相を大きく不安定化することができるアルキルイミダゾリウム部位を導入を検討し、得られた液体状化合物について、その熱物性及び光物性を詳細に検討し適宜分子設計にフィードバックを行いつつ研究を進展する予定である。
|