研究課題/領域番号 |
16J01384
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田口 純平 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | アシルホウ素化合物 / 生体共役反応 / ボロン酸MIDAエステル / アミノ酸 / オゾン酸化 / ペプチド |
研究実績の概要 |
2012年にスイス・ETHのJeffrey W. Bode教授らはKATライゲーションと呼ばれる反応を報告している。この反応はアシルホウ素化合物とヒドロキシルアミン間でアミド結合が形成される反応であり、Bioconjugationへの応用に適した性質を有している。しかしながら、未だアシルホウ素化合物の合成方法には制限があり、一般性の高い新規合成法の開発が求められている。そこで、本研究ではアシルホウ素化合物の新規合成法の開発に取り組んだ。本研究の最終目標は、開発した新規合成法を用いることで合成例のないアシルホウ素構造を有するペプチド (ペプチドアシルボロン) の合成を達成し、KATライゲーションによるペプチド同士の連結を達成することにある。本年度はBode教授と国際共同研究を行うことで、アシルホウ素化合物の新規合成法の開発に取り組んだ。 申請書に記載したアプローチを含む種々の手法を検討した結果、アルケニルボロン酸MIDAエステルに対するオゾン酸化により広範なアシルボロンを合成できることを見出した。また、本反応を用いることでペプチドアシルボロンの部分構造であるアミノ酸アシルボロンの初の合成を達成した。グリシン類縁体の合成に加え、アラニン類縁体のエナンチオ特異的な合成も達成した。 さらに、2016年10月から2017年1月の期間、Bode教授の研究室へ短期留学を行い、アミノ酸アシルボロンのペプチド構造への導入によるペプチドアシルボロンの合成に取り組んだ。この試みは未だ成功していないものの、今後のペプチドアシルボロン合成における重要な指針が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アシルボロンの新規合成法を開発するため、アルケニルホウ素化合物のオゾン酸化を検討した。その結果、アルケニルボロン酸MIDAエステルを出発原料に用いることで、目的のアシルホウ素化合物が得られることを見出した。このとき、副生成物として過剰に酸化された化合物を確認している。一方で、ボロン酸の保護基の検討としてボロン酸ピナコールエステル、トリフルオトボレート塩、ジアミノナフタレン保護体を用いた場合は、対応するアシルホウ素化合物は得られていない。基質検討の結果、カルボニルの置換基としてフェニル基を有する場合はアシルホウ素化合物と副生成物の選択性が低い (60:40) ものの、アルキル基置換の基質については高い選択性で目的のアシルホウ素化合物を得ることができることが確認された。また、本手法はアミノ酸アシルボロンの合成にも適用可能である。特に不斉炭素を有するアラニン類縁体のアミノ酸アシルボロンについても、光学純度をほとんど損なうことなく反応が進行することが確認された。申請内容と異なるアプローチであるが、本研究で最も重要なアミノ酸アシルボロンの合成が達成されたことを考慮すると、本年度は期待以上の進展があったと考えられる。 目的化合物が得られたため、続いて2016年10月から3ヶ月間, Bode教授の研究室へ短期留学を行なった。留学先での研究テーマとして、ペプチドアシルボロンの合成に取り組んだ。具体的にはアシルボロンをポリスチレンビーズに担持し、続くペプチド固相合成によりペプチドアシルボロンを合成する。結果として、担持は達成されたものの、生成物の化学的な安定性が低く、固相合成によるペプチド鎖の伸長は達成されなかった。
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今後の研究の推進方策 |
第一に, オゾン酸化を用いる新規アシルボロン合成法について、さらに幅広い基質を用いて官能基許容性の確認に取り組む予定である。また、得られたアミノ酸型アシルボロンを用いたKATライゲーションによるオリゴペプチドの合成に取り組む。さらに、本研究の内容は現在、国際学術論文への投稿の準備中である。 第二に, 申請書に記載したC-Hホウ素化反応を用いたアシルホウ素化合物の新規合成法の開発に引き続き取り組む予定である。アシルホウ素化合物の合成法として、市販のホウ素源を用いた触媒的な合成法は未だ報告されていないため、本方法の開発は非常に重要である。 第三に, 得られたアミノ酸型アシルボロンをペプチド構造への導入することによるペプチドアシルボロンの合成に取り組む。留学先で検討したアプローチでは担持はできたものの化学的安定性の低さのためペプチドN末端での伸長が達成されなかった。したがって今後は他の様式での担持を検討する必要がある。
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