研究課題/領域番号 |
16J01394
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
齋藤 竜太 筑波大学, 人文社会科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 現地調査の実施 / 地域研究枠組みおよび方法論双方からの研究発表 / SIC-ICWCとのコネクションの形成 |
研究実績の概要 |
本年度は9月までウズベキスタン共和国に現地調査のため滞在し(受け入れ機関:科学アカデミー歴史学研究所)、資料および情報の収集に努めた。滞在中、4月には同研究所およびドイツ・チュービンゲン大学、フォルクスワーゲン財団の共催による国際シンポジウムに参加し研究発表をロシア語で行うなど、現地での研究成果の発信および研究者らを介しての情報収集にも尽力した。 帰国後も、9月にポーランド・ワルシャワ大学東洋学部にて開催された第4回テュルク研究国際会議にて、また、10月に幕張メッセで開催された、日本国際政治学会第60回大会にて研究発表を行うなど、精力的に研究成果の発信を行った。前者は地域研究、後者は方法論に力点を置いた性質の研究会であったため、双方において研究発表の機会を持ったことは非常に有意であり、これまで主に地域研究に軸足を置いてきた身としては展望が開ける思いであった。 その後、現地調査で得られたデータの整理、解釈枠組みの再検討、および、先行研究との比較などの作業を行ったのち、2017年2月から3月にかけて、中央アジア国家間水利調整委員会学術情報センター(以下、SIC-ICWC)に滞在し、資料収集と現地調査を実施した。 9月までの滞在、および年度明けの2-3月にかけての滞在においては、前者はウズベキスタンのシルダリア州、後者はフェルガナ盆地での現地調査を行った。この両地域はそれぞれ異なる海外援助機関(前者は日本のJICA、後者はスイス開発庁:SDC、International Water Management Institute:IWMI)による水資源管理改善プロジェクトの対象地域であり、灌漑体制が異なる様相を見せていた。これらを比較できたことは、研究目的に大いに資するものであり、博士論文の結論へ明確な道筋を示すものであった。また、SIC-ICWCに知己を得たことは、今後の研究活動の大きな財産になるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では主にウズベキスタン中部のシルダリア州に対象地域を絞って研究を行う予定であった。しかしSIC-ICWCの所長であり、中央アジアの水資源問題に関する、学術面および政策面両方における権威であるヴィクトル・A・ドゥホヴヌィ博士と面識を得、SIC-ICWCに研究生として受け入れてもらう機会を得たことにより、SIC-ICWCが大規模なプロジェクトを実施していたフェルガナ盆地にて現地調査を行うことができた。先述のように、これによってウズベキスタン中部地域と東部のフェルガナ盆地双方を比較することができたことにより、実態をより俯瞰してとらえることが可能になった。管見の限りではSIC-ICWCに受け入れてもらった日本人研究者は初めてであり、この研究滞在は極めて貴重な機会となった。 研究成果の面では、研究代表者はこれまで主に地域研究(エリアスタディーズ)分野での研究会や学会、ジャーナルにおいて、研究発表や論文投稿を行ってきており、9月のワルシャワでの国際大会もそのような性質のものであった。しかし10月の日本国際政治学会はより方法論や研究枠組みに力点を置いたDiscipline-orientedな学会であり、参加者の方々からいただいたコメントはこれまでの学会等で受けたものとは異なるアプローチのものが多く、興味深い機会であった。また、コメンテーターの先生からは非常に有意なアドバイスをいただき、特定地域を深く掘り下げるアプローチに固執してきたこれまでのやり方を再点検するよい機会であった。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は博士論文完成に向けて作業を地道に進めていく予定である。SIC-ICWCで得られたデータを早急に整理し、文脈の中に位置づけていくことが必要である。 フェルガナ盆地での現地調査から得られた現時点での結論は、当初の仮説および分析枠組みにさらに批判を提示するものである。これはこれまで中央アジア地域固有の文脈で進めてきた考察を、より普遍的な文脈へと昇華させる可能性を含んでいる。今年度は大小の研究会、学会等で研究報告を行う機会が多数予想されているため、これまでとは異なる研究領域の場にも積極的に参加し、研究内容の発信と大きな文脈への位置づけを図っていきたい。 また、6月末から7月初旬にかけて、キルギス共和国の首都ビシュケクにおいて、Central Eurasian Studies Society(CESS)の年次大会が開催される予定であり、当該国際会議において研究発表を行う予定であり、SIC-ICWCにおいて得られた成果、および博士論文の概要に基づいた報告を行う予定である。当該国際会議は世界最大の中央ユーラシア研究の大会であり、SIC-ICWCでの成果をもって国際的な学術デビューを果たす所存である。
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