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2016 年度 実績報告書

電気二重層斥力の性質を利用した相転移直接観察のための理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 16J01465
研究機関九州大学

研究代表者

末松 安由美  九州大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード積分方程式理論(HNC-OZ) / 荷電粒子間相互作用 / 実効相互作用 / Debye-Huckel理論
研究実績の概要

電解質溶液中に沈めた荷電粒子間の相互作用について、電解質溶液の濃度変化および電解質の価数変化による相互作用への影響について積分方程式理論(HNC-OZ)を用いて計算を行った。
電解質溶液中の荷電粒子間は電気二重層による実効的な相互作用が働く。電気二重層の厚みや濃度による挙動は、これまでDebye-Huckel理論を用いて説明されることが多かった。しかしこの理論では多価の電解質を含む系の相互作用をうまく説明できない。そこで本研究では積分方程式論を用い、Debye-Huckel(DH)理論を用いた結果と比較を行った。結果、カチオン濃度一定でアニオンの価数を大きくするとDH理論では価数が大きくなるほど斥力が内側で働くようになったのに対し、積分方程式理論の場合は価数による変化はあまりなかった。また、これらの実行相互作用の結果を用いてモンテカルロシミュレーションを行った。その結果、実効直径の長さの変化が二つの理論で逆の順序になった。
次に、実験で観測されているタンパク質のリエントラントな挙動のメカニズムの解明を目的として、カチオンの価数を変化させた時の荷電粒子間相互作用を計算した。多価カチオンを含む電解質溶液中で濃度を上げていくと、溶質であるタンパク質は一度凝集しさらに濃度を上げると溶解するリエントラントな挙動を示す。これまで、タンパク質を一様な荷電剛体球とモデル化して計算された研究があるが、この研究では1価のカチオンしか含まない電解質の場合でもリエントラントな挙動を示した。そこで、本研究ではタンパク質中の酸性残基中の酸素に注目した。酸素が引力パッチとなって相互作用すると仮定し、酸素間の電解質溶液濃度による相互作用変化を計算した。すると、1価ではリエントラントな挙動が見られなかったが、カチオンの価数を上げていくとリエントラントな挙動を示すことがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の計画では熱力学的摂動論および密度汎関数法による荷電粒子間の相互作用を計算するはずであったが、この手法では極めて限られたパラメーターでしか計算ができないことが分かった。この問題を解決するために新しく導入したモンテカルロシミュレーションによって理論的手法とはまた違った広い範囲の相互作用変化や結晶化への影響を発見することができた。また新潟大学の学生との共同研究により、彼が行った密度汎関数法と同等な手法である自由体積理論による結果との比較が可能となり研究に大きな進展をみることができた。

今後の研究の推進方策

今年度得られた結果について、さらなる考察が必要である。また、考察の結果必要となる計算に取り組む。現段階では、次の計算を予定している。今年度に計算した荷電粒子間実効相互作用のアニオンの価数依存性について、カチオンの濃度一定の条件下で計算を行った。この条件では、実効相互作用がDebye-Huckelの価数依存性と完全に逆になると予測して計算を行ったが、実際には積分方程式理論の方には価数依存性があまり見られなかった。そこで、Debye-Huckel理論ではイオンの価数依存性がなくなるイオン強度一定の条件下で積分方程式理論による実効相互作用を計算し、そのアニオンの価数依存性を調べる。また、酸素パッチモデルにおける酸素間の実効相互作用について、共同研究者の新潟大学の学生が出した結果について検証を行う。彼の計算では、タンパク質を一様な荷電剛体球とモデル化した場合にはタンパク質間の相互作用ポテンシャルに含まれる斥力がリエントラント現象が起こるのを阻害していることが示されている。そこで、この酸素パッチモデルでの実効相互作用の斥力の挙動がリエントラントな挙動を阻害するような構造になっていないことを確認する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Effects of interactions between depletants in phase diagrams of binary hard-sphere systems2016

    • 著者名/発表者名
      Ayumi Suematsu, Akira Yoshimori and Ryo Akiyama
    • 雑誌名

      Europhysics Letters

      巻: 116 ページ: 38004-P1~P7

    • DOI

      10.1209/0295-5075/116/38004

    • 査読あり
  • [学会発表] HNC-OZ 理論による電解質溶液中同符号コロイド粒子間 相互作用に基づくモンテカルロシミュレーション2016

    • 著者名/発表者名
      末松安由美、秋山良
    • 学会等名
      日本物理学会 秋季大会(2016年)
  • [学会発表] Monte Carlo simulation of the charged colloidal particles based on the effective interaction calculated by HNC-OZ theory and the radial distribution function2016

    • 著者名/発表者名
      末松安由美、秋山良
    • 学会等名
      The 10th MIni-Symposium on Liquids

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公開日: 2018-12-17  

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