研究課題
1.多価カチオンを含む電解質中のタンパク質は、電解質濃度を上げていくと一度凝集し、さらに濃度を上げるとまた溶解するリエントラントな相挙動をすることが実験で示されている。本研究ではこのメカニズムに理論的手法を用いてアプローチを行った。タンパク質中の酸性残基中の酸素イオンに注目をし、酸素イオン同士が引力パッチとなって局所的に相互作用するモデルを適用する。このモデルの有効性を示すため、酸素サイズの荷電粒子間相互作用を積分方程式理論で計算した。その結果の実効相互作用は、多価カチオンを含まない場合にはリエントラントな挙動を示さず、含む場合のみリエントラントな挙動を示唆する結果となった。また、一様電荷モデルの場合に問題となった長距離斥力は、電解質濃度を上げることで弱くなって消えていくことが示され、酸素パッチモデルが実験の良いモデルになっている有力な結果を示すことに成功した。また同時に、この酸素サイズの粒子間相互作用はシミュレーションでは計算が難しく、粒子間相互作用の粒子サイズ依存性も示すことに成功している。これらの結果を論文にまとめて投稿し、受理された。2.弱結合領域における荷電粒子間相互作用について、特にDebye-Huckel(DH)方程式の適用が適切でない領域で積分方程式理論による計算を行った。特に、DH理論ではイオン強度一定の場合にはアニオンの価数を変化させても荷電粒子間相互作用には影響しない。そこで、DH理論が適用できない弱結合領域での実効相互作用のアニオン価数依存性を調べた。その結果、イオン強度を一定にしても、実効相互作用は変化し、そのアニオン価数依存性は実験や別の理論で求められた結果と定性的に一致した。一方、カチオンの濃度を一定にしてアニオンの価数を変化させたところ、実効相互作用はほとんど変化しなかった。この結果を現在解析しながら論文にまとめている。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Chemical Physics
巻: 149 ページ: 074105~074105
10.1063/1.5038912