劣線形増大度及び優線形増大度の両方をもつ完全非線形楕円型方程式に対する強解の存在性,ABP最大値原理及び弱ハルナック不等式が成り立つことを示した.p-ラプラシアンのpの値が変数に依存しているp(x)-ラプラシアンをもつ方程式は一階微分で方程式全体を割ると劣線形増大度が現れ,さらに勾配の大きさによって劣線形増大あるいは優線形増大で評価できる項が現れるため,非斉次p(x)-ラプラス方程式に対する弱ハルナック不等式や解のヘルダー連続性,より高い正則性を導く際に応用可能性がある. pが2より小さい時のp-ラプラス方程式に代表されるような勾配が0で特異性をもつ偏微分方程式を扱う場合,Crandall-Lionsで導入された粘性解は適切でない.p-ラプラスタイプの完全非線形方程式の粘性解の正則性を扱っている先行研究のいくつかでは粘性解の定義として,定数であるときに主要部が消えた方程式をみたすとしたものを採用している.一方,放物型方程式の場合ではテスト函数のクラスを制限した粘性解を採用しており,楕円型でも同様の定義を考えるのは自然である.この二つの意味の粘性解の同値性を示した.これにより特異楕円型方程式の粘性解の基本理論に使われる可能性がある. 異方性があるアイコナル方程式の粘性劣解であることとその異方性に対応した局所リプシッツ連続函数であることの同値性を得た.勾配拘束問題と障害物問題の同値性の証明では勾配拘束条件から決まる解のリプシッツ評価を得ることが一つの鍵となっており,これにより位置に依存した勾配拘束条件をもつ勾配拘束問題とそれから決まる勾配拘束問題の同値性を得られる可能性がある. グラフの平均曲率流方程式に対する障害物問題の処罰法に依る近似解が元の方程式に収束する際の収束率を,Evansが2010年に導入した非線形随伴法を用いて求めた.
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