研究課題
ニホンウナギの回遊の意思決定プロセスを明らかにするため、島根県神西湖において野外調査を実施した。本年度の主な研究成果を以下に示す。(1)採集した銀ウナギについて、耳石の解析から個体毎に各年の成長量を求め、混合分布モデルを用いたクラスター解析により回遊型毎に成長戦略を調べた。その結果、銀ウナギの成長は高成長~低成長を含む4つのパタンにクラスター分けされた。回遊型毎に成長パタンを比較したところ、汽水ウナギでは、3つのパタン(1、2、4)が出現し、高成長パタンをとる個体が大部分を占めるとともに、成長パタンの多様性が高かった。これに対し、淡水ウナギについても3つのパタン(1、3、4)が出現したが、その組成には大きな偏りが認められ、低成長パタンをとる個体が大部分を占めた。以上より、ウナギの成長には多様な成長パタンを持つことが示された。また、淡水ウナギに比べて汽水ウナギでは成長戦略の多様性が高いこと、高成長パタンをとる個体が多いことが明らかとなった。(2)降河回遊開始の意思決定プロセスを明らかにするためには、上記の結果を踏まえた上で今後は成長戦略を黄ウナギと銀ウナギ間で比較する必要がある。生態学的な特徴を両者で比較するためには、回遊を事前に個体レベルで予測することが必要である。そこで、生殖腺の観察と標識再捕法の組む合わせにより、秋季の降河回遊開始を個体レベルで事前に予測することができるかどうか検討した。しかし、標識放流を行ったが、昨年度中に再捕することができなかった。そのため、同様の生殖腺の観察と標識再捕法を2018年も実施する予定である。
2: おおむね順調に進展している
耳石の解析から成長戦略について検討できており、また、初年度の成果を国際誌に投稿することができたため、概ね順調に進んでいると考える。
耳石の解析は順調に進んでいる一方で、標識個体の再捕獲には課題が残っている。今後は再捕率をあげるための工夫(目立つ外部標識の装着など)をして、標識再捕実験と生殖腺の観察から回遊を個体レベルで事前予測する技術を確立させたい。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件)
Ecology of Freshwater Fish
巻: 印刷中 ページ: -
DOI: 10.1111/eff.12389
ICES Journal of Marine Science
doi.org/10.1093/icesjms/fsx173
Fisheries Science
巻: 83 ページ: 735–742
doi.org/10.1007/s12562-017-1107-z