研究課題
今年度は、植物ホルモンであるジャスモン酸(JA)によって誘導される転写因子OsMYC2とJMTF1のイネ白葉枯病抵抗性における機能解析を進めた。設定した研究計画は概ね遂行でき、成果を得ることができた。具体的には以下のとおりである。(1)OsMYC2の植物病理学的役割の解析これまでの解析で、OsMYC2はJA早期応答性防御関連遺伝子の発現誘導を制御し、イネ白葉枯病抵抗性に寄与することが明らかとなっていた。さらに、ChIP-qPCR解析を行い、OsMYC2が、OsJAZ10遺伝子のプロモーターに存在するG-box様モチーフに選択的に結合し、その転写を直接制御している可能性も示されていた。そこで本年度は、OsMYC2過剰発現イネで発現誘導が認められたOsMYC2応答性防御関連遺伝子に関しても上記と同様の方法でChIP-qPCR解析を行った結果、PeroxidaseをコードするAK107894遺伝子プロモーター上に存在するG-boxモチーフに選択的に結合することが明らかになった。(2)JMTF1の植物病理学的役割の解析これまでの解析により、JMTF1過剰発現イネがオーキシン非感受性イネの表現型と類似していることから、JMTF1がオーキシンシグナルを拮抗的に制御している可能性が考えられたため、オーキシンシグナルへのJMTF1の関与を検証した。オーキシンシグナルのマーカー遺伝子であるOsIAAやOsExpansin遺伝子を用いて、JMTF1過剰発現イネでの発現挙動を調べた。その結果、この過剰発現イネでは多くのOsIAAやOsExpansin遺伝子の発現が抑制されていた。以上のことから、この過剰発現イネでは遺伝子発現レベルでオーキシンシグナルが抑制されている可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
OsMYC2の研究に関しては、初期に計画した実験計画をすべて予定通り遂行し、それぞれの実験に関して全て成果を得ることが出来、OsMYC2に関する研究計画を終了することができた。また、JMTF1に関する研究も順調に成果を重ねており、JMTF1がイネ白葉枯病抵抗性機構において重要な因子であることを明らかにしている。このように、予定した実験計画は全て遂行でき、成果を得ることができた。以上の理由より、おおむね順調に進展していると判断した。
今年度は初期の計画通りに研究が進み、成果を得ることができた。今後はJMTF1の研究を中心に計画した実験を予定通り実施する。具体的には、JMTF1が直接制御する遺伝子の同定を試みる。また、JMTF1過剰発現体を用いて、オーキシン含量の測定や重力屈性を調べることでジャスモン酸とオーキシンのクロストークにおけるJMTF1の役割を解析する。さらに、JMTF1過剰発現体内で発現誘導が認められたオーキシンシグナルの負の制御因子であるOsIAA13に関して、機能獲得型Osiaa13変異体を用いて詳細な機能解析を進める。
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Plant and Cell Physiology
巻: 57 ページ: 1814-1827
https://doi.org/10.1093/pcp/pcw101