今年度は、植物ホルモンであるジャスモン酸(JA)によって誘導される転写因子JMTF1のイネ白葉枯病抵抗性における機能解析を進めた。設定した研究計画は概ね遂行でき、成果を得ることができた。具体的には以下のとおりである。
(1)JMTF1の植物病理学的役割の解析 JAを処理したイネにおいて複数の揮発性物質が蓄積することが明らかとなっている。さらに、それら揮発性物質のうち、揮発性テルペンは、テルペン合成酵素(TPS)によって合成され、その合成産物がイネ白葉枯病抵抗性において重要な役割を担っていることが報告された。そこで、JMTF1過剰発現イネにおいて高発言しているTPS遺伝子を探索した結果、イネ白葉枯病菌に対して抗菌活性を示すγテルピネン合成酵素であるOsTPS24をコードする遺伝子の発現誘導が認められた。そこで、JMTF1過剰発現イネに蓄積している揮発性物質を探索した結果、γテルピネンがWTと比較して有意に蓄積していた。以上のことから。JMTF1はγテルピネンの合成に関与し、イネ白葉枯病抵抗性に寄与することが明らかとなった。さらに、JMTF1過剰発現イネにおいて発現が抑制されるOsEXPA4遺伝子に着目し、その過剰発現イネを作出した。作出したOsEXPA4過剰発現イネのイネ白葉枯病抵抗性を解析した結果、無処理時でイネ白葉枯病の病斑長が長くなり。イネ白葉枯病抵抗性が低下した。以上のことから、JMTF1はOsEXPA4の発現を抑制することによりイネ白葉枯病抵抗機構に寄与することが示唆された。
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