研究課題
光格子中の横磁場イジングモデル構築において、磁気モーメントを有した準安定電子励起状態3P2状態にあるイッテルビウム(Yb)原子の光格子中での特性が重要となる。特に、原子同士の非弾性衝突による2体ロスの存在により、この系は散逸を持つ量子多体系となるため、多体状態としての安定度を明らかにする必要がある。そこでこの準安定電子励起状態に内在する散逸機構に着目し、3次元光格子中にYb原子のボース同位体174Ybを導入したボース・ハバード系において、散逸がモット絶縁体-超流動量子相転移に与える影響について研究を行った。この研究において、弾性および非弾性衝突の両方の効果により原子間に相関が生まれていること、超流動状態を特徴づけるコヒーレンスの発達が散逸の影響によって抑制されていることを明らかにした。また、これまで測定手法が確立されていなかった3P2状態の原子間散乱長を測定する手法を確立し、その値を決定した。この研究の成果を論文及び学会において発表した。また上記の研究を進めると同時に、光格子中の原子を個別観測するための新規量子気体顕微鏡の開発を進めた。高解像度イメージングの実現に必要な固浸レンズを上面に接着したガラスセルを開発し、固浸レンズの面精度検査を行い接着後も十分な性能を維持していることを確認した。次にガラスセルを真空チャンバーに接合し、冷却されたYb原子をガラスセル内にてトラップすることに成功した。さらに、周波数差のある光格子による原子ベルトコンベヤー系を構築し、ガラスセル内部の表面近傍へ原子を移動させることに成功した。加えて、ガラスセル直下3ミクロン程度にまで更に原子を移動し圧縮させるための原子アコーディオン系の開発を行い、発生する収差を打ち消すための機構を構築し、その光学系の評価を行った。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review A
巻: 99 ページ: 031601(R)
10.1103/PhysRevA.99.031601