研究課題/領域番号 |
16J01616
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中尾 暁 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 科学史 / 生物学史 / 進化論史 / 分類学史 / 進化の総合説 / メンデル主義 / J・P・ロッツィ / 早田文藏 |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、20世紀前半において植物学者たちが構想していた非ダーウィン的な進化論の実態を明らかにし、それが進化の総合説の形成とどのように関係したのかを解明することである。 本年度は、20世紀初頭に非ダーウィン的な進化論を模索していた代表的植物学者として、二人の人物に着目した。一人目は、オランダ王立植物標本館の館長を務めたJ・P・ロッツィである。これまで、ロッツィが1910年代以降に独自に提唱していた理論については断片的な研究しかなされてこなかったが、本研究では、化学をモデルにした生物学を構築するというロッツィの壮大な構想の輪郭を捉えることができた。また、近年の科学史研究ではメンデルに関する理解が大きく更新されていることを踏まえて、ロッツィの進化思想がメンデルのそれと深く結びついていることを示した。ロッツィに関する研究成果については、本年度前半に2件の口頭発表を行った。 二人目は、東京帝国大学教授を務めた早田文藏である。早田については、2016年に台湾で伝記が出版されるなど近年注目が集まっているが、1920年代から30年代前半にかけて発表された一連の理論的業績については、まだ十分な理解が進んでいない。本研究では、20世紀初頭の生物学で台頭していたメンデル主義の文脈や、早田が信仰していた仏教思想の文脈を踏まえて、早田の独特で難解な議論がいかなる意味をもっていたのかについて説明を試みている。また、早田が所持していた未調査の史料についても調査を行い、公刊物と非公刊資料の両面から早田の思想の全貌解明を進めている。早田に関する研究成果については、本年度後半に英語で2件の口頭発表を行った。 また本年度は、進化的総合に関する議論についても基礎的なサーヴェイを行い、科学哲学の議論との接続を試みた。この研究成果は、6月に科学基礎論学会のワークショップ「生物学における総合を問いなおす」で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のなかで重要な位置を占める二人の植物学者、ロッツィと早田文藏について基礎的な調査を終え、彼らの生物学思想の解明に向けて一定の見通しを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は、早田文藏に関する研究成果を論文として発表することを一つの目標とする。また、ロッツィについての研究を深めるとともに、ロッツィが影響を与えた米国の植物学者たち(E・C・ジェフリーやE・アンダーソンなど)についても研究を拡大していく予定である。
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