研究実績の概要 |
平成28年度、平成29年度の研究では、学会誌に発表した無置換の鉄サレン錯体を触媒として用いた二つの反応のうち(Chem. Eur. J. 2016, 22, 12278-12281)、合成化学上有用なtert-ブチルエステルを合成可能な反応であるメチルエステルと三級アルコールを用いた触媒的なエステル交換反応の反応性の向上のため、高活性な触媒の開発を目指した。種々の検討の結果、無置換の鉄サレン錯体よりも高い触媒活性を有するいくつかの錯体を見出すことに成功した(詳細な構造については省略する)。しかしながら、本研究の最終的な目標と比較すると触媒活性は未だ不十分であった。そこで、平成30年度は置換基以外の部分、特に錯体に含まれるリンカーやカウンターアニオンに注目し、検討をおこなうこととした。 本年度は、リンカーで連結された錯体に注目し、近接効果による触媒活性の向上を目指し、錯体の検討を行った。しかし、検討する予定であった錯体は、複雑な構造を有する新規錯体が多く、錯体の合成が困難であり十分に触媒活性の検討を行うことはできなかった(詳細な構造は省略する)。一方、錯体の合成や精製・分析に関する知見は得ることができたため、今後の研究に生かしたいと考えている。また、研究計画に記載したヒドロキシ基とアミノ基の共存下における化学選択的かつ位置選択的アシル化反応についても、錯体の合成が不十分であったため、十分に検討を行うことができなかった。
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