研究課題/領域番号 |
16J01752
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 大裕 東京大学, 理学(系)研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 位置天文学 / VLBI / 電波天文学 / 銀河系中心 |
研究実績の概要 |
本年度は、日本国内の超長基線電波干渉系網(VLBI)であるVERAを用いて、銀河系中心領域の水メーザー天体の位置天文観測を行い、年周視差の測定を行った。また、銀河系中心方向の位置天文観測における問題点を解決するために考案した新たな観測手法を用いて観測を行い、観測結果の位置決定精度の評価を行った。 (1) 銀河系中心方向の非常に明るい電波源として知られる、Sgr D領域に付随する水メーザー天体について年周視差の測定に成功し、査読論文として投稿した。また、この結果について2016年7月にオーストラリアで行われたIAU Symposium 322でポスター発表を行った。(2) 銀河系中心部で非常に活発な星形成が行われている、Sgr B2領域に付随する水メーザー天体について年周視差の測定に成功した。また、Sgr B2のMain領域の水メーザー分布と内部運動を世界で初めて測定することに成功した。(3) 銀河系中心領域において、より多くの水メーザー天体の位置天文観測を可能にするために新たに考案した、「明るいメーザー天体を用いた間接的な絶対位置測定方法」について試験観測を実施し、その位置決定精度の評価を行った。結果として、通常の観測方法では見られない微小な系統的な誤差が存在していることがわかった。この原因を調査するために試験観測を行い、現在解析を行っている。(4)VERAの観測装置の広帯域化に伴い、今まで直接検出が難しかった背景基準天体の観測を実施し、精度評価を含めたデータ解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sgr D領域とSgr B2領域の水メーザー天体に対する位置天文観測を行い、年周視差を得ることに成功した。また、Sgr B2 Main領域について詳細な水メーザー分布と内部運動のマップを作成したことは、今後、ALMAを含む様々な望遠鏡を用いて追観測を行うことで、銀河系内の最も有名な星形成領域の一つであるSgr B2領域の理解に大きく貢献することが期待される。 一方で、「明るいメーザー天体を用いた間接的な絶対位置測定方法」については、通常の観測方法で見られない系統的な誤差が発生しており、十分な位置決定精度が得られていない。その誤差の原因を切り分けるための試験観測を実施し、解析を始めたところである。従って、全体として概ね当初の予定通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まずSgr B2領域の位置天文観測結果と水メーザー分布について査読論文としての投稿を目指す。また、「明るいメーザー天体を用いた間接的な絶対位置測定方法」における、系統的な誤差の原因を調査する。原因究明を目的として本年度に行った試験観測のデータ解析を継続して行う。銀河系中心領域方向で本年度から観測を開始した天体について、データが取得でき次第解析を行い、年周視差の測定に成功したものから査読論文化を進める。年周視差と固有運動が得られたものについての結果をまとめ、銀河系中心領域のガスの運動メカニズムに制限を与える。新たに位置天文観測が可能なメーザー天体の選定を進め、適したものがあれば観測提案を行う。
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