研究課題
宇宙全体に広がる物質の分布やその進化(宇宙大規模構造)を解明することを目的とし、物質密度の揺らぎの非線形成長の研究や観測データの理論的な解析手法の開発を行ってきた。まず一つ目として、前年度に引き続きIa型超新星の明るさに対する重力レンズ効果に注目した。昨年度までは、明るさの確率分布として単純なガウス分布を仮定して理論モデルを構築してきたが、今年度は、密度揺らぎの非線形性を反映させたより現実的な Log-normal 分布にモデルを拡張し、次世代の超新星の観測プロジェクト(WFIRST) において、暗黒エネルギーの性質やニュートリノの質量をどの程度制限できるか予測を行った。その結果、重力レンズによる明るさのばらつきを考慮した場合、従来の考慮しない場合と比べて、暗黒エネルギーの状態方程式がより厳しく制限されることを示せた。また、今回のモデルを重力波天体の観測に応用した場合、次世代の重力波観測プロジェクト(Einstein Telescope)においてニュートリノの質量をこれまでにない精度で制限できる可能性があることが分かった。この結果を論文としてまとめ、現在、査読付き欧文雑誌に投稿中である。二つ目として、銀河分布の二点相関関数の中に特徴的なスケールとして現れるバリオン音響振動ピークを用いた距離測定の研究を行った。これまでに、より精密な距離測定に向けて、従来の銀河(物質)分布の再構築法の問題点を解決した、より正確な物質分布の再構築法(iterative algorithm)を開発してきた。今年度は、この新たな再構築法をN体シミュレーションから得られた銀河分布に適用し、従来の再構築法との比較を行った。その結果、特に小スケールにおいて、従来の方法に比べて二点相関関数をより正確に復元できることが分かった。この結果は学会で発表し、論文として査読付き欧文雑誌に投稿し、出版された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 478(Issue 2) ページ: 1866~1874
10.1093/mnras/sty1203
巻: 482(Issue 4) ページ: 5685~5693
10.1093/mnras/sty3137