研究課題/領域番号 |
16J01860
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
箕輪 昌紘 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | カービング氷河 / 水中融解 / カービング |
研究実績の概要 |
(1)人工衛星・現地観測データの解析 人工衛星画像の解析により,南パタゴニア氷原ペリート・モレノ氷河で末端位置と流動速度の季節変動を明らかにした.末端位置の季節変動は末端消耗速度にコンロトールされていた.また,末端消耗速度の季節変動は湖水面温度と強い相関を示し,カービングと末端変動が水中融解に強く影響を受けることを研究結果は示唆している.本成果は2017年に国際誌へ出版された.また同氷河において水温,濁度,水の酸素同位体比から氷河末端の水中融解量を算出し,カービングにより発生する津波からカービングの発生頻度の解析を行った.これらの研究成果は博士論文としてまとめた.現在,それぞれの研究成果について国際誌へ投稿論文を準備中である. グリーンランドのボードイン氷河において,インターバルカメラにより氷河流動,末端位置,海氷変動の解析を実施した.末端位置の季節変動の定量化に成功し,末端位置変動が気温変化と明瞭に関係していることが明らかとなった.また水温,塩分,酸素同位体比を使い氷河末端の水中融解量の算出を行った.ボードイン氷河では,夏期において末端消耗と同程度の水中融解速度があることが明らかとなった.現在国際誌に投稿準備中である. (2)野外観測 2016年7月にグリーンランド,ボードイン氷河において,2017年3月にはパタゴニア氷原のペリート・モレノ氷河,グレイ氷河,ヴィエドマ氷河において現地観測を行った.ボードイン氷河ではカービングに伴う津波の測定とインターバルカメラによるカービングの撮影を行なった.パタゴニアの氷河では,グリーンランドと同様に津波の測定とインターバルカメラによる撮影を行なった.さらに,ドローンにより氷河末端の空撮を行い高解像度の可視画像や数値標高モデルを作成し,カービングした氷山の体積の計算を試みている.これらの成果を国内・国際学会で発表に向け準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は当初の予定に沿って現地観測とそのデータの解析及び人工衛星画像解析を実施した. 人工衛星画像データ解析に関しては,南パタゴニア氷原のペリート・モレノ氷河において末端位置と流動速度の季節変動を明らかとし,水温と比較することで氷河の季節変動が水中融解に強く影響を受けることを明らかにした.本成果は国際誌へ出版された.また,ペリート・モレノ氷河について水中融解量の算出に成功した.この研究成果は博士論文としてまとめた.現在国際誌への投稿に向けて原稿を準備中である. 次に当初の予定に沿ってパタゴニアやグリーンランドの氷河で野外観測を実施した.湖やフィヨルドの水塊測定とカービングによって発生する津波の測定に成功した.また,インターバルカメラの解析から末端位置変化,流動速度,海氷移動速度の解析を実施し,国内外の学会で研究成果を報告した. 以上の状況を鑑みて,平成28年度の研究は目標の成果を挙げたと考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,これまでに得られた野外観測データの解析を推し進める.これまでの湖に流入するウプサラ氷河,ペリート・モレノ氷河,グレイ氷河での現地観測に加え,海洋に流入するボードイン氷河,サン氷河,ジョンソンズ氷河で水塊構造とカービングによって発生する津波の測定を実施してきた.ペリート・モレノ氷河では水中融解がこれまで思われていたよりも大きく,末端変動に大きな影響を与えることが明らかとなった.今後これまでに取得したデータから水中融解量とカービングの発生メカニズムを観測した全ての氷河について解析することで,急速に後退するカービング氷河の変動に氷河前縁の海や湖が与える影響の解明を目指す.
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