研究課題/領域番号 |
16J01883
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永澤 彩 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 窒素固定 / モリブデン錯体 / ピンサー配位子 / N-ヘテロ環状カルベン |
研究実績の概要 |
温和な条件下での触媒的な窒素固定反応は省エネルギー型の窒素固定法として開発が期待されているが、報告例が限られている。私の所属する研究室では最近、PNP型ピンサー配位子を持つ二核モリブデン錯体が還元剤およびプロトン源存在下、常温・常圧の窒素ガスを触媒的にアンモニアへと変換する反応を開発した。しかし、本反応系では配位子の解離による触媒の失活が観測されており、触媒活性の向上のためには配位子の解離を抑制する必要があった。そこで私は昨年度までに、配位子の解離を抑制することを目的にPNP配位子のピリジンをN-ヘテロ環状カルベン (NHC) へと変換したPCP配位子を持つ二核モリブデン窒素錯体の合成に成功した。得られた錯体を用いたアンモニア合成反応を検討したところ、モリブデン原子あたり最高で115当量と高い触媒活性を示した。 2017年度は、PCP配位子を有するモリブデントリハライド錯体を用いることでさらなる触媒活性の向上を目指した。検討の結果、PCP配位子を有するモリブデントリクロロ錯体を用いた触媒的アンモニア合成反応では、添加剤としてヨウ化ナトリウムを加えることでモリブデン原子あたり167当量のアンモニアを生成した。モリブデントリハライド錯体を用いることで、対応する窒素錯体よりもアンモニア合成に対する触媒活性を向上させることに成功した。さらに、この錯体を用いた反応の反応速度は、対応する窒素錯体と比較して1.5倍へと向上した。以上のように、2017年度にはPCP配位子を有するモリブデントリハライド錯体がアンモニア合成反応に対して高い触媒活性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2017年度においては、PCP配位子を有するモリブデントリハライド錯体を触媒として用いたアンモニア生成反応における活性の評価に成功した。その結果、アンモニア生成量および生成速度を向上させることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に得られたPCP配位子を有するモリブデントリハライド錯体の触媒活性が対応する窒素錯体よりも向上したという知見をふまえて、その反応中間体の観測、単離により活性の向上の理由を明らかにする。さらに、水や電気を用いた触媒的アンモニア合成を可能にする遷移金属錯体を設計、合成し、その反応性の評価を行う。
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