研究課題/領域番号 |
16J01890
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 尚徳 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
|
キーワード | KSZ効果 |
研究実績の概要 |
これまで、私はKinematic Sunyaev-Zel’dovich (KSZ)効果の測定による、宇宙論的制限を与えることを目標に研究を行ってきた。KSZ効果とは、宇宙マイクロ背景放射が、バルク運動している自由電子ガスと逆コンプトン散乱を起こし、その温度が変化する効果である。KSZ効果は、1970年から理論予言はされていたものの、初めて検出されたのは2012年であり、宇宙論の分野では比較的新しく注目された観測量である。現在の観測精度では、まだまだ検出できるが、宇宙論的な制限、特に宇宙に存在するダークエネルギーの制限には使うことができない。しかし、今後数年において、さらなる高精度観測によって、その状況は改善されると期待されている。 このような状況の中で、私はデータをフーリエ変換することで、フーリエ空間におけるデータ解析を行い、KSZパワースペクトルという申請者独自の観測量を定義することで、KSZ効果を測定した。さらには、測定されたKSZ効果の観測を通じて、銀河のホスト~ハロー内のガスの光学的厚みを測定し、その空間分布を世界で初めて宇宙論的な統計手法を用いて制限することに成功した。特に、測定結果を解釈するための理論モデルの構築も同時に行い、KSZ効果における理論と観測の双方の観点から、大きな成果をあげることができた。 この成果は、今後のさらなる高精度KSZ観測にすぐに適用することができ、それによって新たな発見が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題であるKinematic Sunyaev-Zel’dovich (KSZ)効果について、独自の観測量を定義し、その理論モデルを構築し、さらには測定するための手法を考案し、実際に既存のデータを用いてKSZ効果を測定するという一連の流れを全て行い、それらの結果を論文にまとめることのできた年度であった。これは、当初に予定していた以上の成果である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の目標は、日本が主導となって動いているHSC/PFS 計画による銀河分布のデータを用いて、KSZ 効果を測定することである。これまでの既存のデータによる観測精度では、KSZ効果を用いて宇宙論を行うことは難しかった。しかし、さらなる高精度データを用いることで、KSZ効果による新たな発見が期待される。
|