研究課題/領域番号 |
16J02020
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
矢野 貴大 筑波大学, システム情報工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 固有値計算 / Sakurai-Sugiura法 / 並列計算 / Krylov部分空間反復法 |
研究実績の概要 |
今年度は交付申請書の研究目的1.「周回積分型固有値解法を演算加速器を持つ計算機クラスタにおいて大規模な問題に適用するために必要となる,分散並列実行可能な連立一次方程式ソルバを実現する」,および2.「固有値分布推定の結果を利用したパラメータ決定,および周回積分型固有値解法の計算過程の見直しによる計算の高速化を行う」について取り組んだ. 項目1.について,係数行列を正方形のグリッドに分割し各グリッドを密行列として保持するブロック行列-行列積のGPUクラスタ向け実装を行い,性能を評価した.非零要素が少ない部分については疎行列格納形式であるSELL-C-σの並列実装であるGHOSTを用いて疎行列化を行った.また,9月にドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクで行われた,GHOSTの開発元であるESSEXプロジェクトのミーティングではGHOSTのXeon Phi対応について情報を得た. 一方Krylov部分空間反復法について,実対称一般化固有値をSakurai-Sugiura法で解く際に現れる複素対称行列を実数演算のみで求解を行うReal-Valued Block CGrQ法の実装を,線形計算ライブラリEigenを用いて行い,複素対称行列向け解法である前処理付きBlock COCGrQ法と計算時間,解の精度の比較を行った.現在はその成果を論文としてまとめ論文誌へ投稿中である. 項目2.について,直交化手法であるCholesky QR法の分散並列実装を行った.現在は同法の性能評価を行い,Sakurai-Sugiura法への適用を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書に記載した研究目的1.「周回積分型固有値解法を演算加速器を持つ計算機クラスタにおいて大規模な問題に適用するために必要となる,分散並列実行可能な連立一次方程式ソルバを実現する」について,申請書に記載した行列・複数右辺ベクトル積を実装し性能を評価することはできたが,それを利用したBlock BiCGrQ法の実装,および性能評価には至っていない. 研究目的2.「固有値分布推定の結果を利用したパラメータ決定,および周回積分型固有値解法の計算過程の見直しによる計算の高速化を行う」については,申請書記載の確率的固有値分布推定法による自動パラメータ設定,およびBlock Arnoldi型解法の実装が途上であり,計算の高速化に至っていない. 一方で,来年度取り組む予定であった研究目的3.「演算加速器を持つ計算機クラスタ上で,実問題から現れる固有値問題に適用し性能を評価する」については,実装,および性能評価を行ったReal-Valued Block CGrQ法が,実問題でよく現れる実対称一般化固有値問題への適用の際に現れる解の精度の悪化などの懸念事項を解消する可能性がある. 以上から,本研究の達成度は当初の予定に対してやや遅れていると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
今年度達成することができなかった研究目的1.および2.を可及的速やかに達成し,研究目的3.「演算加速器を持つ計算機クラスタ上で,実問題から現れる固有値問題に適用し性能を評価する」に取り組む. 現在は応用先として振動解析で現れる実対称一般化固有値問題,および電子状態計算から現れる一般化固有値問題を想定しており,両分野の研究者と協力して固有値計算の高速化を目指す. 本研究で得られた結果を国内外の学術会議で積極的に発表し,学術論文としてまとめる.
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