研究実績の概要 |
本研究はオノマトペが運動事象知覚などの知覚・認知に与える影響について多角的に検討することで,オノマトペの認知処理メカニズムおよび言語・視覚・聴覚のネットワーク的処理を解明することを目的としている。本年度は以下の二つの点について検討を行った。 (1)オノマトペによる運動事象知覚の変容 運動事象知覚を必要とする刺激の一つである,交差・反発刺激に対するオノマトペの影響について検討した。本年度は特に摩擦や感情を表すオノマトペの影響に焦点を当てた。実験の結果,オノマトペの表す摩擦力が強いほど反発と知覚される割合が上昇した。さらに,怒りを表すオノマトペや高い覚醒度を持つオノマトペを交差・反発刺激に同時呈示した場合でも反発と知覚される割合が増加した。これらの結果は,物理的な接触を直接表す情報の処理のみならず,比喩的な接触情報の処理や感情処理も交差・反発知覚とリンクし,その知覚的な判断に影響を与えることを示唆している。本成果は国内の学会にて発表され,九州心理学会にて優秀発表賞を受賞した。 (2) オノマトペによる運動刺激に対する空間定位の変容 運動刺激の消失位置は実際の位置より運動方向側に誤定位される。速い運動や停止を表すオノマトペを運動刺激に同時呈示し,この誤定位の度合が変容するかを検討した。その結果,停止を表すオノマトペの同時呈示により誤定位の度合が減少した。さらに,速い運動や停止を表す漢字二字熟語を呈示した時には消失位置の定位への影響が生じなかった。これは,オノマトペが特異的に運動刺激の空間定位を変調することを示唆する。本成果は国内外の学会にて発表され,査読付き国際誌に掲載された (Gobara, Yamada, & Miura, 2016)。 他にも,感情を表すオノマトペから想起される自伝的記憶に関する研究も行い,その成果は査読付き国内誌に投稿された (郷原・佐々木・山田, 投稿中)。
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