本研究は,異種ソーシャルメディアに散在するマルチメディアコンテンツやユーザの情報を集約し,ユーザ個々人に最適な検索・推薦を実現することを目的としている. 平成29年度は,まず,ユーザの嗜好に合致するマルチメディアコンテンツを高精度かつ効率的に取得するための理論構築を行った.具体的には,ソーシャルメディアのユーザは,意見や感情すなわち自身の嗜好をマルチメディアコンテンツのセンチメントによって表現するという報告に着想を得て,マルチメディアコンテンツからセンチメント特徴を抽出し,画像・テキスト特徴と統合的に解析する理論を構築した.その結果,YouTubeとTwitterという異種ソーシャルメディアを対象として,画像・テキスト・センチメント特徴の統合的な解析によって,ユーザの嗜好に合致したマルチメディアコンテンツが高精度かつ効率的に検索・推薦可能となることを明らかにした.さらに,マルチメディアコンテンツの画像・テキスト特徴に加え,トピックの抽象度を考慮した新たな類似度を定義することで,異なる時刻に生成されたマルチメディアコンテンツを適切に比較可能とする理論を構築した.その結果,マルチメディアコンテンツのトピックのトレンド変化を把握可能とし,マルチメディアコンテンツを高精度に検索可能とする新たな手法を実現した.ユーザの満足度を調査する被験者実験を行うことで,トレンド変化を考慮しない従来の検索法と比べ,望むマルチメディアコンテンツが効果的に検索可能となることが確認された. 以上の通り,本年度は,異種ソーシャルメディアに散在するマルチメディアコンテンツやユーザの情報を集約し,ユーザ個々人に最適な検索・推薦を実現するための理論構築を行い,実験によってその有効性を確認した.
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