研究課題/領域番号 |
16J02046
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 和貴 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 血液脳関門透過タンパク質 / 血液脳関門 / 定量プロテオミクス / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
本研究は、定量プロテオミクスを用いて、血液脳関門(以下BBB)を透過する新規のタンパク質を同定し、その輸送機構の解明および脳への高分子DDSの構築を目的としている。本年度は、脳細胞質タンパク質のin vitro BBB透過実験の網羅的プロテオーム解析においてBBB透過候補分子として同定されたキナーゼAについて、in vivoにおけるBBB透過性の証明及びBBBにおける輸送特性の解明に着手した。さらにin vivoにおけるBBB透過タンパク質のスクリーニング法の確立に着手した。 キナーゼAをマウスに静脈内投与後、30 min~6 hにおける全脳抽出物対血漿中濃度比を算出した結果、経時的な増加が検出された。さらに、キナーゼA投与後のマウスの大脳を脳実質画分と脳血管画分に分画し、経時的な各画分対血漿中濃度比を算出した結果、脳実質画分での増加率が、全脳抽出物画分での増加率と近似したことから、キナーゼAは脳血管へと蓄積せず、脳実質内へと移行することが速度論的に示された。また、タンパク質のbiotinラベル技術とSWATH法を組み合わせることでin vivoにおけるBBB透過タンパク質のスクリーニング法を構築した。本スクリーニング系を用い大脳及び肝臓タンパク質の透過実験を行った結果、キナーゼAを含む複数のBBB透過タンパク質が同定された。キナーゼAのBBB透過性は既に実証済みであることから、スクリーニング系の確からしさが証明され、新たなBBB透過タンパク質の候補が同定された。また、ヒト不死化脳毛細血管内皮細胞(hCMEC/D3細胞)への取り込み活性の評価を行ったところ、キナーゼAの取り込みは既存のBBB透過分子transferrinに匹敵する取り込み活性を示し、さらに少なくとも数十uMまで取り込み活性の飽和が見られないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画していた「BBB透過候補タンパク質のin vivo BBB透過速度の解明及びin vivoにおけるBBB透過タンパク質のスクリーニング系の確立」について達成した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、新規のBBB透過タンパク質としてキナーゼAのin vivoにおけるBBBの透過が証明でき、さらにin vitro BBBモデル細胞を用いた解析から、脳への新規のDDS経路としてその輸送機構が有望である可能性を示した。そこで、今後はキナーゼAの輸送を担う輸送分子の解明及びそれを利用した脳内への高分子DDSの構築を行う。
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