研究課題/領域番号 |
16J02071
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福永 大樹 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 磁気特性制御 / 異方性 / ボトムアップ合成 |
研究実績の概要 |
ボトムアップ手法を利用した分子磁性体の構築及びその物性制御に主眼を置き、本研究では二次元磁気層の層間に機能性分子を導入した異方性超分子格子の合成、特異的物性の発現、及び制御を目指している。具体的な設計指針としてπ-スタック等の超分子相互作用を利用することを提案し、その計画に基づいた今年度の取り組みは、主に以下の二つに分けられる:a)すでに合成に成功した化合物の物性探索 b)今後を見据えた新規化合物の合成 である。 a)の点においてはPaddlewheel型Ru二核錯体([Ru2])とTCNQが成す異方性二次元磁気層の層間に挟み込まれた[MCp*2]+ (M = Co, Fe, Cr)のスピンがバルク磁性に与える影響について、圧力測定の結果等から化合物内にあるスピン同士の相互作用がどのようなものかについて徐々に明らかとなってきた。当初予想していたよりも複雑な結果であったが、丁寧に情報を集めてゆくことで、スピン同士にある種のフラストレートと言える負荷がかかっているという全体像が見えてきている。この過程において学会発表も行っており、次年度に向けて確かな前進ができたものと考えている。 b)の点においては、特定の[Ru2]を用いた異方性二次元磁気層に対して様々カチオンを挿入することに成功した。本手法を用いることでアンモニウムカチオンからクラウンエーテルに含有された金属イオンまでを導入することが可能であり、本研究計画で述べた異方性超分子格子の構築法が確かに有用であることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二次元磁気層の層間に[MCp*2](デカメチルメタロセン、M = Co, Fe, Cr)を有する系を中心に、異方性超分子格子における磁気特性について詳細な検討を行った。これらの化合物の挙動は当初予想していたよりも複雑であったが、詳細な実験検討を行うことで全体像が明らかとなってきた。 また、新しい超分子格子の開発についても、様々なカチオンを導入した新規化合物の合成に成功していることから、概ね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
メタロセン導入系の挙動が明らかとなってきたことで、異方性超分子格子における磁気構造について徐々に全体像が見えてきている。今後は今ある仮説を確かなものとするための追加実験を行い、成果として纏める予定である。 また、[Ru2]を用いない二次元磁気層にカチオンを導入した、新規超分子格子の開発にも本格的に着手する。
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