研究実績の概要 |
当初解析を予定していたヒトAgo2について、非特異的なsmall RNAとの結合が生化学的に観察され、1分子観察における本タンパク質の解析は困難であると示唆された。その為、1分子観察の実績のあるハエAgo2を用いて、そのタンパク質自体の構造変化の観察を試みた。 近年、多くのAgoが共通して、RISC形成にHsc70/Hsp90シャペロンマシナリーを必要とすることが明らかとなった(Iwasaki, Mol. Cell 2010, Iki, Mol. Cell 2010, Miyoshi, NSMB 2010)。さらに、in vitro再構成系と1分子イメージングを用いて、ショウジョウバエAgo2のRISC形成過程を解析した研究が受入研究室より発表された。ここでは、RNA2本鎖を含む複合体とAgoがシャペロン非依存的に短時間の結合と解離を繰り返すことや、シャペロンの作用点が明らかとなった(Iwasaki, Nature 2015)。しかし、RISC形成を通じてこのAgo自体がどのような構造変化を受けているかについての知見は乏しい。そこで、Agoの異なる2箇所に蛍光色素を導入し、1分子イメージングを用いて蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の効率変化を観察することにより、特に2本鎖RNAを積み込む際、Agoにどのような構造変化が生じているかについて観察することとした。 現在までに、他研究室からの報告(A. Bianco, Nat. Chem. Biol., 2012)を参考に、ショウジョウバエS2細胞において効率良く非天然アミノ酸を導入する方法、及びこの残基に蛍光色素を導入する方法を、受入研究室において確立した。合わせて、様々な部位に蛍光色素を導入しその活性を測定している。
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