研究実績の概要 |
近年、多くのAgoが共通して、RISC形成にHsc70/Hsp90シャペロンマシナリーを必要とすることが明らかとなった(Iwasaki, Mol. Cell 2010, Iki, Mol. Cell 2010, Miyoshi, NSMB 2010)。しかし、RISC形成を通じてこのAgo自体がどのような構造変化を受けているかについての知見は乏しい。そこで、Agoの異なる2箇所に蛍光色素を導入し、1分子イメージングを用いて蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の効率変化を観察することにより、Agoにどのような構造変化が生じているかについて観察することとした。 現在までに、他研究室からの報告を参考に、ヒト細胞において効率良く非天然アミノ酸を導入する方法、及びこの残基に蛍光色素を導入する方法を、受入研究室において確立した。 実際に1分子解析を通じて、small RNAが取り込まれる際にAgo内に導入した2色間のFRET効率が低下し2点間の距離が離れた、つまりAgoが開いた状態へと構造変化している様子が捉えられた。 また、そのsmall RNAの取り込みを手助けするシャペロン因子群(Hsp70系、Hsp90系)によりAgoがさらに開いた構造になることを見出した。興味深いことに、Hsp70系単体でもAgoの一部をこの開いた構造にすることができ、なおかつ程度は低いながらもAgoを活性化していることがわかった。一方で、Hsp90系単独では構造的にも活性の面からも何も影響を与えなかった。代わりに、Hsp90系はHsp70系によって開かれた構造の持続時間を延長することが観察され、以上の観察からHsp70系とHsp90系の機能的な相違点を見出すことが出来た。 このような一連の1分子観察により、RISC形成やシャペロンの影響による構造変化を観察できたことは、有意義であったと考えている。
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