研究課題/領域番号 |
16J02142
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松崎 賢史MARCRAYMOND 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 日本海 / 中新世 / 長期離心率(40万年)の影響 / 熱帯種 / 北太平洋深層水の影響 |
研究実績の概要 |
本年度では国際深海科学掘削計画Integrated Ocean Drilling Program (IODP) Expedition 346時に日本海で採取された海洋コア試料の堆積物を使用して日本海の過去1000万年間の古海洋変動を復元する事を目的にしていた。日本海の大和堆上の地溝部周辺に位置するU1425地点にて採取された堆積物の処理と分析を行った(160試料)。私が分析したのは放散虫という珪質の殻を持つ微生物の化石である。 研究試料の地質年代の確定が重要であった為、第一段階としておよそ40-50試料を使用して大まかな放散虫化石の生層序を立て、国内の研究者と協力し全日本海の放散虫化石の生層序を組み立てた。 日本海は過去700-250万年の間は活発な構造運動によって古地理が変化した事が知られている。その活動により徐々に日本海は太平洋から隔離される事も知られている。H28年度ではその構造運動を考慮しながら過去1000万年間における日本海の古海洋変動史を復元した。その為、分析した地点(日本海のIODP Exp.346 Site U1425)で産出した重要な種の古地理・古生態の情報を文献から取りまとめ、日本海の海洋環境変動を明らかにした。放散虫の群集変化から以下の環境変化を推定した: 1、250-700万年間では日本海の表層水は亜寒帯から温帯な海洋環境である。2、400万年頃に日本海の中層水の起源が変わる事が推定できる。過去400万年以降から北太平洋の高緯度海域の中層水が日本海に流れ込むことが考えられる。3、700-1000万年間では日本海が北太平洋深層水の影響を受けている事と北太平洋の表層・温暖水が長期離心率(40万年周期)によって日本海に流れ込む事が推定できる。来年度中(H29)に国際雑誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度中に生層序の研究でIODP Exp. 346時に日本海で採取されたコア資料の年代が明らかになった。そこで過去1000万年間の日本海の放散虫群集変動の分析を終了し、そのデータから後期中新世における日本海の古海洋環境史をトレースする事が可能である。来年度の前期はそのデータの論文化作業に集中できる。また、陸上のサンプリング (秋田県ー北海道)も行えて陸上の資料も多く得ているので来年度はそこの分析と論文の作業に集中できるので順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度では優先的に過去1000万年間における日本海の古海洋環境変動について得たデータを論文にして公開する。本課題では中期中新世の日本海の古海洋変動を復元するのも目的だった。しかしH28年度の生層序の研究により採取した海洋資料は中期中新世をカバーしていない事が明らかになったので中期中新世の研究は対象外になった。 そこで、日本列島の日本海側の陸上では中期中新世の露頭の存在が以前から報告されていた為、秋田県の中・後期中新世露頭でサンプリングを行った。そこで採取した岩石資料の処理を来年度引き続き行う予定である。資料中の放散虫群集を可能であれば分析する (化石の保存状態による)。そこで中期中新世をカバーできたら中期中新世の海洋環境の変動は陸上資料で行う。しかし、化石の保存は陸上の資料では良くない場合が多く、研究の対象にならない可能性もある。そこで保険としての別海域の中期中新世の海洋資料を依頼して研究する事も考えている。現地点で考えているのは西赤道太平洋の資料である。
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