内部磁気圏ＥＭＩＣ波動を用いた超熱的エネルギーイオン分布の解明と将来観測への応用

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16J02163
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 松田 昇也 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 特別研究員(PD)
• 研究期間 (年度): 2016-04-22 – 2019-03-31
• キーワード: EMIC波動 / あらせ(ERG)衛星 / プラズマ波動 / プラズマ圏 / イオン組成

研究実績の概要

本研究は，内部磁気圏におけるコールドイオン（～数eV）の分布を，プラズマ波動観測によって明らかにすることを目標としている．本年度は，イオン組成比推定に用いる電磁イオンサイクロトロン（EMIC）波動のイベントを収集すべく，ジオスペース探査衛星ERG（あらせ）の科学観測機器の一つである，「プラズマ波動観測器PWE」の機器開発と運用方針の立案，初動観測データの解析を実施した．特に，電磁イオンサイクロトロン（EMIC）波動の長時間に渡る波形データを取得するために，軌道上で取得した65 kHzサンプリングの電磁界波形を，機上処理で1024 Hzに高速ダウンサンプリングする「EMICバーストモード」を実装し，ERG衛星の軌道で数Hz～数百Hzに現れる電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波動の観測が十分に実施できるよう工夫した．これにより，通常の波形観測モードに比べて地上へ伝送する波形データのサイズが3%まで削減でき，長時間に渡るデータの取得が容易になった．また，ダウンサンプリング処理の効率化により，水星探査衛星MMOに搭載されるプラズマ波動観測器PWIの同処理と比較して2倍程度，高速化に成功した．年度の末頃に実施された初動観測では，複数の電磁イオンサイクロトロン（EMIC）波動のイベントが取得できていることを確認し，本研究で着目している特性周波数変動がよく捉えられていることも確認できた．また，2012年から運用中のVan Allen probesに搭載されているプラズマ波動観測器EMFISISのデータを解析し，主として磁気赤道近傍のコールドイオン組成比の変化を調査した．今年度の解析では，高度数百-数千kmの領域で雷放電を起源として励起・伝搬する「雷起源電磁イオンサイクロトロン（EMIC）波動」に着目し，その特性周波数が磁気ローカルタイムによって大きく変動することを明らかにした．

現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ERG(あらせ)衛星に搭載したプラズマ波動観測器PWEで，目標とする現象の観測に成功し，次年度以降観測例の収集を行うための基盤形成が十分に遂行できた．また，他衛星のデータ解析を進め，次年度以降の解析方針の整理を行うことができた．以上のことから，当初計画していた目標は十分に達成できていると判断する．

今後の研究の推進方策

定常観測に入ったERG衛星の観測データ解析を進め，Van Allen probesでは難しい低-中緯度帯のEMIC波動のイベント収集と特性周波数解析を行う．

研究成果

• [学会発表] Plasma Wave Experiment (PWE) On Board The Arase (ERG) Satellite ~Specification And Initial Observation Report~ (2017)
  • 著者名/発表者名: Yoshiya KASAHARA, Yasumasa KASABA, Hirotsugu KOJIMA, Satoshi YAGITANI, Keigo ISHISAKA, Atsushi KUMAMOTO, Fuminori TSUCHIYA, Tomohiko IMACHI, Mitsunori OZAKI, Shoya MATSUDA, Mamoru OTA, Hiroki OKUDA, Mitsuru HIKISHIMA, Ayako MATSUOKA, Kazushi ASAMURA, Takeshi TAKASHIMA, Yoshizumi MIYOSHI, Iku SHINOHARA
  • 学会等名: AOGS 14th Annual Meeting
  • 発表場所: Singapore
  • 年月日: 2017-08-06 – 2017-08-11
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Initial Report of the Onboard Frequency Analyzer/Waveform Capture (OFA/WFC) on board the ERG(ARASE) Satellite and its Calibration Technique (2017)
  • 著者名/発表者名: Shoya Matsuda, Yoshiya Kasahara, Hirotsugu Kojima, Yasumasa Kasaba, Tomohiko Imachi, Mitsunori Ozaki, Satoshi Yagitani, Keigo Ishisaka, Atsushi Kumamoto, Fuminori Tsuchiya, Mamoru Ota, Yoshizumi Miyoshi, Ayako Matsuoka, Mitsuru Hikishima, and Iku Shinohara
  • 学会等名: 32nd URSI GASS
  • 国際学会
• [学会発表] Onboard Processing on PWE OFA/WFC (Onboard Frequency) Analyzer/Waveform Capture) aboard the ERG(ARASE) Satellite (2017)
  • 著者名/発表者名: Shoya Matsuda, Yoshiya Kasahara, Hirotsugu Kojima, Yasumasa Kasaba, Satoshi Yagitani, Mitsunori Ozaki, Tomohiko Imachi, Keigo Ishisaka, Mamoru Ota, Atsushi Kumamoto, Fuminori Tsuchiya, Yoshizumi Miyoshi, Ayako Matsuoka, Iku Shinohara
  • 学会等名: JpGU-AGU Joint Meeting 2017
  • 国際学会
• [学会発表] Investigation of ion components in the plasmasphere using plasma wave observations (2016)
  • 著者名/発表者名: Nomura, K., Y. Miyoshi, S. Kurita, S. Matsuda, K. Keika, M. Shoji, S. Machida, Y. Kasahara, N. Kitamura, O. Santolik, C. Kletzing, S. A. Boardsen, J. Wygant
  • 学会等名: 地球電磁気・地球惑星圏学会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 2016-11-21 – 2016-11-21
• [学会発表] ERG搭載プラズマ波動観測器PWEにおける受信器特性の機上較正手法の実装 (2016)
  • 著者名/発表者名: 松田 昇也, 笠原 禎也, 小嶋 浩嗣, 笠羽 康正, 井町 智彦, 尾崎 光紀, 八木谷 聡, 石坂 圭吾, 櫻井 勢一郎
  • 学会等名: 地球電磁気・地球惑星圏学会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 2016-11-20 – 2016-11-20
• [学会発表] ERG衛星プラズマ波動観測データの地上データ処理の開発 (2016)
  • 著者名/発表者名: 奥田 拓希, 松田 昇也, 太田 守, 笠原 禎也, 笠羽 康正, 土屋 史紀, 小嶋 浩嗣, 井町 智彦, 後藤 由貴, 三好 由純
  • 学会等名: 地球電磁気・地球惑星圏学会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 2016-11-20 – 2016-11-20
• [学会発表] Current Status and Planning of The Plasma Wave Experiment (PWE) onboard the ERG Satellite (2016)
  • 著者名/発表者名: Kasahara Y., Y. Kasaba, H. Kojima, S. Yagitani, T. Imachi, M. Ozaki, S. Matsuda, K. Ishisaka, F. Tsuchiya, A. Kumamoto
  • 学会等名: Asia-Pacific Radio Science Conference 2016
  • 発表場所: Seoul
  • 年月日: 2016-08-21 – 2016-08-25
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Variation in Crossover Frequency of Ion Cyclotron Whistlers in the Lower Plasmasphere (2016)
  • 著者名/発表者名: Matsuda, S., Y., Kasahara, Craig A. Kletzing
  • 学会等名: AOGS 13th Annual Meeting
  • 発表場所: Beijing
  • 年月日: 2016-08-02 – 2016-08-02
  • 国際学会
• [学会発表] Cold heavy ion composition in the lower plasmasphere estimated from lightning induced EMIC waves (2016)
  • 著者名/発表者名: Matsuda, S., Y., Kasahara, Craig A. Kletzing
  • 学会等名: JpGU Meeting 2016
  • 発表場所: 幕張
  • 年月日: 2016-05-24 – 2016-05-24
• [学会発表] ERG衛星プラズマ波動観測データの地上データ処理・較正システムの開発 (2016)
  • 著者名/発表者名: 奥田 拓希，松田 昇也，太田 守，笠原 禎也，笠羽 康正，土屋 史紀，小嶋 浩嗣，井町 智彦，後藤 由貴，三好 由純
  • 学会等名: JpGU Meeting 2016
  • 発表場所: 幕張
  • 年月日: 2016-05-24 – 2016-05-24