研究課題/領域番号 |
16J02164
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
林 慶 岐阜大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 肝蛭 / 形質転換 / 体内移行 |
研究実績の概要 |
Fasciola属(肝蛭)において、体内移行メカニズムの解明を目的とした形質転換法の確立を試みた。まず、ウイルスベクターを用いた遺伝子導入の検討を行った。肝蛭の虫卵、幼虫の各ステージに対し、レポーター遺伝子を挿入した組換えウイルスを曝露し、肝蛭への遺伝子の導入を評価した。その結果、いずれのステージにおいても、レポーター遺伝子の導入は確認できなかった。 次に、mRNAを導入する方法を試みた。エレクトロポレーション法を用い、脱嚢幼虫にレポーター遺伝子のmRNAを曝露した。幼虫体内へのmRNAの導入は確認された一方で、レポーター遺伝子の発現は確認できなかった。このことから、エレクトロポレーションによるmRNAの導入は、その導入および翻訳効率が不十分であることが考えられた。 そこで、発現抑制による遺伝子の機能解析を試みた。脱嚢幼虫の腸管穿孔あるいは肝臓侵入といった体内移行に関与すると予想されるタンパク質Aを標的としたdsRNAを用い、タンパク質Aの発現抑制を試みた。その結果、dsRNA脱嚢後7日の幼虫において、タンパク質Aの発現抑制が確認された。次に、マウス腸管ループ試験を行い、タンパク質Aは幼虫の腸管脱出には関与しない可能性を見出した。さらに、曝露幼虫をマウスに経口感染し、肝臓へ移行した幼虫の数を定量的に評価した結果、dsRNA曝露により、感染マウス肝臓における肝蛭遺伝子のコピー数が減少する傾向が認められた。このことから、タンパク質Aは幼虫の肝臓への侵入あるいは肝実質内における肝蛭の生存に重要な機能を有する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は肝蛭に代表される寄生蠕虫類における体内移行メカニズムを明らかにするため、形質転換法を確立することを目的とした。しかしながら、ウイルスベクターやmRNAを用いた形質導入法に成功しなかったため、代替法としてdsRNAを用いた発現抑制法を用いた機能解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
発現抑制法を用いることで、体内移行に関与すると考えられる他のタンパク質について機能解析を行う。また、個々のタンパク質のみならず、タンパク質間の相互作用についても解析も行う予定である。さらに、寄生蠕虫類の体内移行メカニズムを俯瞰的に理解するため、類似した移行動態を示す他の蠕虫類においても同様の解析を行い、その相違点を探る。
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