研究課題/領域番号 |
16J02175
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
畑中 達彦 東北大学, 情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 遷移問題 / 固定パラメータアルゴリズム / アルゴリズム / グラフ / リスト点彩色 |
研究実績の概要 |
理論計算機科学分野の中でも近年特に注目を浴びている題材の1つに「遷移問題」がある.遷移問題とは,ある条件を満たす解から局所的な変更操作を繰り返して別の解へ「遷移」することを目的としている.ただし,遷移の過程でも常に条件を満たす解となっていなければならない.多くの遷移問題において,最悪の場合には指数的に多くの変更操作を要することが知られているため,従来研究では変更操作の回数が少ない場合に高速に動作するアルゴリズムが多く研究されてきた.本研究では,遷移問題に対して,変更操作回数が多くなる場合にも高速に動作する汎用的なアルゴリズム手法の開発を目的としている. 本年度は,遷移問題の中でも特に研究の盛んな「リスト点彩色遷移問題」に焦点を当て,「固定パラメータ容易性」の観点から研究を行った.その結果,当初計画していた通り,コグラフやスプリットグラフといったグラフに対してリストを構成する色の種類数をパラメータとした「固定パラメータアルゴリズム」,すなわち色数が少ない場合に高速に動作するアルゴリズムを構成した.さらに,計画時に想定していたよりも一般的なグラフ(例えば,モジュラ幅制限グラフなど)への拡張にも成功した.これにより,色数及びモジュラ幅といったグラフの構造的パラメータに関して固定パラメータ容易性の詳細な解析を与えることができた.特に,本アルゴリズム手法は,「情報圧縮」に基づいて考慮すべき解を減らすことに成功しており,本研究の主目的達成に向けた大きな一歩であると言える. 現在,以上の結果をまとめた論文を執筆中であり,次年度にも国際会議に投稿する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の投稿にこそ至らなかったものの,計画していた以上の研究成果を得た.一方で,情報圧縮の観点から考えると,現在の証明手法には依然として改善・洗練の余地があると言える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,本研究の最終目標である「汎用的アルゴリズム手法」の開発に向けた土台作りの為,リスト点彩色に限らず様々な遷移問題に対して「情報圧縮」の観点から新たなアルゴリズム手法の構築を目指す.その後,各アルゴリズム手法の洗練を行いつつ,より一般的な遷移問題への適用可能性を探っていく.これにより,各手法が有用に働いている本質的な要因を突き止め,汎用化の推進力としたい.
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