研究課題/領域番号 |
16J02200
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加葉田 雄太朗 北海道大学, 大学院理学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 写像の特異点 / 曲面の局所的性質 / 射影微分幾何学 / 曲面の分岐 / 曲面の射影 |
研究実績の概要 |
平成平成28年度は主に以下の射影空間内の曲面の局所理論に関する研究に取り組み結果を得た. (1)3次元射影空間内のパラメーター付き曲面族の研究(大本亨氏(北大),Jorge Luiz Deolindo Silva氏(ブラジルUFSC)との共同研究):我々は以前の研究において曲面のジェネリックな2パラメーター族に現れる曲面芽の射影変換による局所分類を得ている.本研究ではその結果であるMonge形式のジェットの各標準形に対して,曲面の漸近線方向に関したBDE(binary differential equation)のトポロジカルなタイプの決定や,放物点曲線などについての分岐の直接的な計算による決定をすることができた. (2)4次元射影空間内の曲面の研究(Deolindo Silva氏との共同研究):我々は4次元射影空間内の(2次元)曲面に関して局所射影分類と,その中心射影に現れる特異点分類(Mond(1982))との比較を行った.これは3次元射影空間内の曲面の局所射影分類に関するPlatonova(1981)の結果の拡張である.Platonovaの結果がその後の射影曲面に関する研究の基本的な文献となったように,我々の標準形も最近活発になってきている4次元空間内の曲面論の有用なツールとなると期待される. (3)3次元射影空間内の線織面の研究(大本氏,Deolindo Silva氏との共同研究):我々は上述(1)(2)のような曲面の局所射影分類を3次元射影空間内の線織面や可展面に関しても行った.とりわけ,射影に現れる特異点のタイプや,flecnode点曲線の局所的性質を分類の基準としている点が新しい着眼点である.古典的にはnon-torsalと呼ばれる線織面のクラスの分類に関してはWilczynski(1906)などにより知られており,本研究はその大幅な拡張になっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は曲面の局所論の研究に関して大きな進展があった.曲面のMonge形式の標準形を導きそれを基にして曲面上の局所的性質を調べるという手法が,種々の不変量に関する直接的な計算の実行と明示的な結果を得ることを可能にした.特に3次元射影空間内のパラメーター付き曲面族におけるBDEと分岐のタイプの決定に関する研究と4次元射影空間内の曲面の局所射影分類に関する結果はそれぞれ論文にまとめられ,専門誌に投稿中である.また,それ以外の研究も含めて学会や国際研究集会などで積極的に発表をしてきた.一方,退化した点における曲面の微分幾何的不変量に関する研究や写像の特異点分類の特徴付けに関する研究などについてはまだまとまった結果が得られておらず,次年度の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成28年度に得られた曲面の局所理論に関する結果,特に曲面のMonge形式の標準形を基にして,退化した点における曲面の局所微分幾何的不変量に関する研究を進めたい.最初は線織面について扱うのが適当と考えている.Wilczynskiはnon-torsalと呼ばれるクラスの線織面の各タイプに対して幾何学的不変量による特徴づけを与えているが,Wilczynskiの手法をnon-torsalでない線織面にのクラスに一般化したい.線織面に関する体系的な手法が確立できれば,一般の曲面の不変量の研究の足がかりとなると考えている. (2)可微分写像芽(特異点)の分類に対して幾何的な特徴づけを与えたい.まずは申請者によりその判定法(認識問題)などがよく研究されている平面から平面への可微分写像芽分類(Riegerなど)を扱い,DamonのK_D理論やGaffneyのA-接空間のフィルトレーションに関する議論との比較を検討する.
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