平成29年度は、主に2つのことに取り組んだ。1つ目は複合動詞に関する母語獲得研究である。2つ目は、他大学の研究者との共同研究である。 まず初めに、複合動詞に関する母語獲得研究について報告する。本年度は、日本語を母語とする子どもが複合動詞と複合名詞が同じ時期に観察され始めることに着目し、また、それがなぜなのかを明らかにするための研究に取り組んだ。(学会誌等への発表 番号4)。具体的には、原理とパラメータのアプローチの観点から日本語の複合動詞に必要なパラメータが何かという問いに取り組んだ。そして、複合動詞に必要なパラメータの1つが複合語パラメータである可能性が非常に高いことを示した。その提案を裏付けるために、CHILDESを使用した実証研究を行った。日本語を母語とする子ども、Akiの発話を調査した結果、複合動詞と複合名詞の初出が2歳5ヶ月に観察されたことを示した。このことを基に、複合語パラメータが心理的に実在している可能性が高いと提案した。 次に、他大学の研究者との共同研究である。一瀬陽子氏と團迫雅彦氏との共同研究では、韓国語が母語の日本語学習者および中国語が母語の日本語学習者が日本語の複合動詞の習得する際、母語の干渉があるかどうか検討した。その結果、韓国語が母語の日本語学習者の場合、「食べ続ける」のように、V2が「続ける」の複合動詞を「続けて食った」というように、韓国語で「食べ続ける」を表現するときに使う言い回しを使って表現する学習者がいることが分かった。このことから、日本語学習者が日本語の文法を習得していく中間段階には母語の干渉があることが明らかになった。
|