研究課題
先行の研究で一次胆汁酸であるコール酸の摂取が脂肪肝を誘導し、未病モデルであることを見出した。この病態モデルでの脂肪肝は1st hit直後の状態で、2nd hit前の単純性脂肪肝であると考えられる。しかしながら、肝臓や血中での炎症反応は見られず、消化管透過性の亢進が確認された。そこで、コール酸負荷による脂肪肝発症メカニズムを調べるため、LPSを2nd hitしてコール酸摂取ラットに投与し、肝炎での悪化を調べた。コール酸を10週間摂取した Fischer344ラットにLPSを皮下に投与、投与6時間後に解剖を行った。その結果、先行研究においてWKAH系統のラットで見られた透過性の亢進は見られなかった。肝臓及び消化管内容物における胆汁酸組成が系統間で異なることより、消化管透過性に影響を及ぼすことが考えられる。一方で肝障害マーカーがコール酸群でさらに増加したことから、コール酸負荷が肝障害の悪化させることが明らかになった。また、そのメカニズムを調べるため、肝臓での炎症関連遺伝子や繊維化マーカの発現を分析した。しかし、LPS刺激でのコール酸摂取による炎症や繊維化関連遺伝子発現には有意差が見られなかった。LPSによる炎症反応に自然免疫細胞であるマクロファージが関与していることから、マクロファージの機能に関与する遺伝子を分析した結果、群間差は見られなかった。本研究では0.05%コール酸摂取による単純性脂肪肝の病態モデルで、LPS刺激による肝障害の悪化が示唆された。高脂肪食の摂取は胆汁酸の分泌を促進させ、加齢により一次胆汁酸であるコール酸の割合が増加する。また、高脂肪食による体内でのLPS濃度の増加や加齢による免疫システムの変化が知られている。したがって、胆汁酸摂取による単純性脂肪肝の発症が「未病」状態であることを強く示唆するだけでなく、炎症や代謝疾患の発症や悪化に繋がる可能性も示している。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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