研究実績の概要 |
本年度は昨年度発見したシロイヌナズナの根冠ムシレージについてその発生機構を詳細に解析した。まず、Propidiumu Iodideを用いて根冠ムシレージを染色することで、根冠ムシレージが蓄積するタイミングを明らかにした。また、透過型電子顕微鏡による詳細な観察により、根冠ムシレージが細胞膜と細胞壁の間に存在していることを明らかにした。さらに、根冠ムシレージの周囲に他の細胞では観察できない非常に大きな小胞が存在していることを発見した。これらの小胞によって根冠ムシレージが輸送されているのではないかと考えられた。また、ムシレージが蓄積しているc6細胞の周辺細胞に注目して観察したところ、6細胞やその次のc7細胞の基部側の細胞壁だけ薄くなっている様子が観察された。また、c6細胞とc7細胞の間では細胞壁が乖離しており、その間にムシレージが存在していたことから、薄くなった細胞壁を通ってムシレージが細胞壁の外へと出ているのではないかと考えられた。 また、根冠のTerminal differentiationを制御していると報告されているBEARSKIN1(BRN1), BEARSKIN2(BRN2)がムシレージを制御しているのではないかと考え、解析を行った。まず、brn1 brn2二重変異体の根端をPI染色した結果、c6細胞に根冠ムシレージは観察されなかった。次に、根端に墨汁をかけると根やムシレージの領域には墨汁が入って行けないことを利用し、放出されたムシレージの量を定量した。その結果、brn1 brn2二重変異体では野生型と比べて有意にムシレージの放出量が少ないことが分かった。また、brn1 brn2二重変異体では野生型で見られた小胞が非常に小さいことが分かった。以上の結果から、BRN1とBRN2は冗長的にperiplasmic mucilageの蓄積を制御しているのではないかと考えられた。
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