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2016 年度 実績報告書

ALMAで探る遠方宇宙のダスト放射ー銀河形成に残されたフロンティア

研究課題

研究課題/領域番号 16J02344
研究機関東京大学

研究代表者

藤本 征史  東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2016-04-22 – 2019-03-31
キーワード遠方銀河 / 銀河形成 / 銀河進化 / サブミリ銀河 / 星形成
研究実績の概要

私は修士課程においてALMAの公開されたアーカイブデータを利用して、サブミリ・ミリ波長帯で明るいミリ波天体の大規模サンプルを構築した。これにより、これまで見つかってこなかった暗いミリ波天体を数多く集めた。研究実施計画における本年度の目標は、こうして新たに見つかってきた暗いミリ波天体の分光観測と多波長解析であった。これに則り、すばる望遠鏡に研究代表者として提出した観測提案が採択され2016年6月にハワイへ渡航、暗いミリ波天体に対する近赤外分光観測を行った。[OIII]、Hα輝線比より計算されるミリ波天体の金属量を調べ、結果をすばる国際会議にて発表した[実績4]。

また修士課程で培った解析技術を生かして、ALMAの公開されたアーカイブデータを精力的に集め続け、世界最大規模のミリ波帯天体サンプルを構築した。この巨大なサンプルを用いてミリ波帯における銀河のサイズと光度の関係、進化に新たな発見をもたらした。成果は以下に述べる3点である。ミリ波帯における銀河サイズは、1) 遠赤外帯光度と正の関係をもつこと、2) 赤方偏移0から6にかけて小さくなること、3) 可視・近赤外帯銀河サイズよりも小さいこと。こちらの成果は天文学会、国際研究会の場で発表を行い、またApJ誌へ投稿した論文は現在査読中である[実績1, 2,6]。

その他、すばる超広視野カメラ(HSC)で見つかってきている赤方偏移4から6における原始銀河団のミリ波帯追観測に大きく貢献し、SMA(1本)、JCMT(1本)、ALMA(2本)の計4本の観測提案を研究代表者として提出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

銀河サイズと光度の関係は銀河進化を理解する上で重要である。これまでの静止系紫外-可視における研究では遠方銀河において銀河のサイズと光度に関係があることがわかっていた。一方で、銀河中のダスト放射成分であるミリ波帯(静止系遠赤外帯)でこうしたサイズと光度に関係があるかどうかはよくわかっていなかった。統計の不足や解析手法の違いが原因で、近年のALMAデータを用いてもこれらサイズと光度に関係があるのかわからない状況だったのである。
そこで私はALMAの公開されたアーカイブデータを精力的に集め、世界最大規模のミリ波帯銀河サンプルを構築した。検出されたソースの個数は736にのぼる。このサンプルを元に、静止系遠赤外帯銀河サイズ-光度に関係があるのかを調べた。またこれまで議論されていなかったサンプルセレクションバイアスや測定バイアスについても詳細なシミュレーション解析を施した。結果、静止系遠赤外帯におけるサイズ-光度は99%以上の信頼性で正の相関を持つことを明らかにした。また、この正の傾きはα=0.26±0.06と求められ、静止系紫外-可視で求められているディスク銀河の値とよく一致したことから、遠方銀河におけるダスト放射起源はディスク銀河の成長過程での放射ではないかという提言も与えた。また赤方偏移毎でサンプルを分けてもこの正の関係が見え、高赤方偏移に従って平均的なサイズが減少する傾向が得られた。またこうして得られた遠赤外帯サイズと紫外-可視サイズを比較したところ遠赤外帯サイズが統計的にも、個別のケースでも紫外-可視サイズと比べても小さいことがわかった。これは遠赤外帯に対応するダスト放射が銀河中における非常にコンパクトな領域で起こっていることを示唆する。以上の結果は、ダスト放射と銀河進化の関係に迫る重要な結果として、論文にまとめApJ誌に投稿、現在審査中である(実績1)。

今後の研究の推進方策

引き続きALMAのアーカイブデータを精力的に集め続けることで構築される、大規模ミリ波天体サンプルを元に研究実施計画で述べている課題1) 最も暗い(< 0.01mJy)天体の検出、課題3) ミリ波天体に対する可視・近赤外データのスタッキング解析、を行う予定である。

また私は「すばる望遠鏡『HSC戦略枠』観測提案」プロジェクトのメンバーとして、広視野HSCデータで見つかるz~4-6原始銀河団のミリ波波帯フォローアップ観測に携わっている。原始銀河団では大質量の星形成が活発に起こっていると考えられている。高赤方偏移の原始銀河団であるほど、銀河形成と環境効果関係の初期状態を調べることができ、良いターゲットとなる。一方で、大質量の活発な星形成は大量のダストを同時に生成してしまうため、静止系紫外-可視での観測ではダスト吸収により、詳細を調べることができない。そこで既にHSCで発見されているz~4-6原始銀河団に対して、可能な限りのミリ波帯装置に追観測提案を、私が研究代表者として提出した。具体的にはSMAで分光観測を1本、JCMTで撮像観測を1本、ALMAで分光、撮像観測をそれぞれ1本、計4本である。今後、これらの高赤方偏移原始銀河団ミリ波帯追観測は、採択され次第、順次観測される予定であるため、データの取得状況に応じて、こちらの研究課題も随時遂行予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)

  • [国際共同研究] SNS(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      SNS
  • [国際共同研究] ASIAA(台湾)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      ASIAA
  • [国際共同研究] KITP(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      KITP
  • [雑誌論文] Demonstrating a New Census of Infrared Galaxies with ALMA (DANCING-ALMA). I. FIR Size and Luminosity Relation at z=0-62017

    • 著者名/発表者名
      Seiji Fujimoto
    • 雑誌名

      Astrophysical Journal (Submitted)

      巻: - ページ: -

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ALMA Demographics: FIR Size and Luminosity Relation at z=0-62017

    • 著者名/発表者名
      藤本征史
    • 学会等名
      日本天文学会2017年春季年会
    • 発表場所
      日本, 福岡, 九州大学
    • 年月日
      2017-03-15 – 2017-03-18
  • [学会発表] Extremely Faint mm Sources identified by multi-field Deep ALMA Survey and Subaru Follow-up Spectroscopy2016

    • 著者名/発表者名
      藤本征史
    • 学会等名
      すばる国際会議「Panoramas of the Evolving Cosmos」
    • 発表場所
      日本, 広島, 広島国際会議場
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
    • 国際学会
  • [学会発表] ALMA Demographics: FIR Size and Luminosity Relation at z=0-62016

    • 著者名/発表者名
      藤本征史
    • 学会等名
      Physical Characteristics of Normal Galaxies at z>2
    • 発表場所
      オランダ, ライデン, ライデン大学ローレンツセンター
    • 年月日
      2016-10-21
    • 国際学会
  • [学会発表] ALMA Demographics of [CII] and dust emission in star-forming galaxy at z=5-92016

    • 著者名/発表者名
      藤本征史
    • 学会等名
      日本天文学会2016年秋季年会
    • 発表場所
      日本, 愛媛, 愛媛大学
    • 年月日
      2016-09-12 – 2016-09-15
  • [学会発表] ALMA Demographics of [CII] and dust emission in star-forming galaxy at z=5-92016

    • 著者名/発表者名
      藤本征史
    • 学会等名
      The Cold Universe
    • 発表場所
      アメリカ, サンタバーバラ, カリフォルニア大学サンタバーバラ校カブリ理論物理研究所
    • 年月日
      2016-05-06 – 2016-05-10
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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