宇宙誕生後、水素とヘリウムで構成される原始的なガスから初期の銀河が形成されます。恒星内部の核融合や超新星爆発過程で生み出された重元素は、銀河中心の巨大ブラックホールの活動や超新星爆発を受けて、銀河外へ放出されます。これをoutflowと呼びます。星を作るガスも銀河外へ放出し、星形成を抑制することから、outflowは銀河進化理解にとても重要な物理機構です。一方で、宇宙誕生後数億年後の初期銀河においても、こうしたoutflowが存在しているかは、観測的に確かめられておらず、よくわかっておりませんでした。
そこで私は現在公開されている、初期銀河の炭素の微細構造輝線[CII]158umの光を狙ったアルマデータを全て集めました。統一的な解析により18個の初期銀河から[CII]輝線を検出しました。これらの初期銀河から検出した[CII]輝線を干渉計特有の素観測量であるUV平面上で重ね合わせる処理により、実質的に世界最高感度のアルマデータの取得を達成しました。輝線に対してアルマのUV平面上で重ね合わせを行う解析は世界初であり、これは私がこれまでアルマに関する3編の査読論文で地道に積み上げた経験から、初めて生み出した手法により実現しました。これにより、初期銀河の大きさの約5倍に相当する、半径10kpcに広がる[CII]の構造を発見することができました。現在の標準的な銀河形成モデルでは巨大なこの炭素ガス構造は再現されませんでした。またこれは初期銀河におけるoutflowの痕跡を、世界に先駆けて、初めて観測的に捉えたことになりました。
これらの結果は初期の銀河形成における重要な結果として、論文にまとめApJ誌に投稿、現在審査中です。また国内外の研究会や国際機関の談話会で多くの発表機会を与えられるだけでなく、海外研究機関からfellowshipのオファーを受けるなど、国際的に高く評価されています。
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