研究課題/領域番号 |
16J02406
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 佑介 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | 分子ロボティクス / DNAナノテクノロジー / 人工細胞 / マイクロマシン |
研究実績の概要 |
本研究は,細胞サイズ分子ロボットが自律的に運動を制御するための基盤技術を創出することを目的とする.分子ロボットとは,人間が設計した機能性分子機械を組み合わせて構築される極微小なロボットのことを指す.従来の分子ロボットの運動は,熱揺らぎに依存したランダムなものであり,運動の制御は実現できていなかった.我々は,DNAの配列設計技術を応用し分子ロボットの運動を可制御なものへと発展させることを提案している.本年度は,細胞サイズ分子ロボットが短鎖DNA分子信号に応じてアメーバ様の変形挙動の制御機構の開発に努めた.具体的には,キネシンと微小管から構成される「分子アクチュエータ」とDNAから構成される「分子クラッチ」を,その他20種類以上の分子種とともにリポソーム内に統合した.分子ロボットへの信号分子の入力は,ロボット内部に光応答性のDNA信号分子(UV光により特定の塩基配列が現れるDNA)を内包する手法を採用した. 本年度の成果として,分子ロボットの構成要素を適切に調整することで,連続的な変形挙動を示すアメーバ型分子ロボットを開発することに成功した.また,実験により,分子ロボットが信号分子に応じた変形/静止状態を制御可能であることを示した.本成果は,信号を認識してアクチュエータを制御する,というロボットシステムを分子機械で実現した初の成果である.これらの成果は研究計画における「分子デバイス群の統合によるアメーバ運動の制御」にあたるものであり,国内外の会議で発表を行うとともにアメリカ科学技術振興協会(AAAS)刊行のScience Robotics誌より学術論文として掲載された.さらに,国内外のメディアにも紹介されるなど,高い注目を集めるものであった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子ロボティクス分野の課題であった分子機械の統合を実現し,信号分子の入力に応じて変形と停止を制御する分子ロボットの開発に成功した.本成果は,分子ロボットが自律的に運動を制御するための基盤技術となりうるものと考えられる.さらに,我々が開発した分子ロボットは,凍結・融解に耐えうることを発見した.凍結状態で他の研究室へと郵送された分子ロボットは,解凍後も変形機能を維持することが可能であった.これは,当初の想定を上回る成果であり,本研究成果を分子ロボット開発の標準プラットフォームとして活用することが期待出来る.ビーズを利用したリポソーム膜面上の分子配置制御技術の開発については,複数のポリスチレンビーズを高密度でリポソーム内に封入することに成功した.膜面上の分子配置の制御の確認・評価はまだできていないが,研究課題全体としてはおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
ビーズを利用したリポソーム膜面上の分子配置制御技術の開発については,引き続き評価実験を行う予定である.一方で,本年度の成果が分子ロボット開発のプラットフォームとして活用できる可能性が示されたことから,当初の計画に加えて,他の研究室で開発された分子デバイスとの組み合わせを共同研究として推進することを予定している.
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備考 |
本年度の研究成果に関して,大学の広報部を通じ研究成果のプレスリリース(日・英)を発表し,国内外のメディアを通じて研究成果が紹介された.(参考: https://www.altmetric.com/details/16903992) プレスリリース:https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2017/03/press20170228-02.html
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