研究課題/領域番号 |
16J02459
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三浦 静 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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キーワード | ダイレクトリプログラミング / 腸幹細胞 |
研究実績の概要 |
ヒト線維芽細胞から誘導腸幹細胞に必要な因子の探索を行った。まず、腸幹細胞の誘導に必要と考えられる遺伝子を文献等で探した。それらの遺伝子をクローニング後、レトロウイルス用ベクターを作製した。その後、各種レトロウイルスを作製し、作製したウイルスをさまざまな組み合わせで導入して培養を行った。遺伝子導入の方法も時間や回数など多くのパターンを試した。その結果、一番効率よく遺伝子を導入できる方法を確立できた。ヒト線維芽細胞から誘導腸幹細胞を誘導する際の培養系は、多くの文献を参考にし、様々なサイトカインや低分子化合物を添加して上皮系組織を形成するための一番良い条件を探した。このような条件で様々な遺伝子の組み合わせを導入して培養した線維芽細胞の中から、もっとも効率よく上皮系組織を形成する因子を確定した。このような培養条件で得られた上皮系細胞が本当に腸幹細胞になっているか否かを調べるために、腸幹細胞マーカーや腸上皮細胞マーカーで免疫染色を行い、解析を行った。さらに、形成された上皮系細胞はqPCRでも腸幹細胞マーカーや腸上皮細胞マーカーの発現を調べた。また、その上皮系細胞は引き続き継代培養を行い、長期間継代が可能かを調べた。その際、増殖の割合についてもともに調べた。たくさんの種類の誘導腸幹細胞を作製し、プロトコールや遺伝子発現パターンも含めた再現実験を行った。そして、今後の移植実験のために、免疫不全マウスを用いてヒトの細胞用の移植系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト腸幹細胞の誘導に必要な因子の探索を行うために、たくさんの文献を参考にし、因子を限定できたことが今年度の大きな成果である。因子の限定のためには、多くのレトロウイルスベクターの作製が必要であったが、短期間で必要なすべてのレトロウイルスベクターを作製することができた。このようにして作製したレトロウイルスベクターを用いて多くの数の因子の組み合わせをヒトの細胞に導入し、すべての組み合わせに関して評価を行った。さらに、ヒト腸幹細胞誘導の際に使用する培地の組成に関しても様々なサイトカインや低分子化合物を組み合わせて最も効率よく誘導できる条件を探した。遺伝子導入の際の条件も数多く検討し、最適な条件を見つけることができた。この最適な条件で繰り返し実験を行い、再現性も確認できている。この方法で作製した誘導ヒト腸幹細胞は長期培養も可能であり、腸上皮細胞のマーカーも発現していることが分かった。このように、当初の予定通り因子の探索、培養条件の決定を行い、ヒト腸幹細胞を誘導することができた。さらに、特性解析も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き誘導ヒト腸幹細胞の特性解析を行うとともに、ヒト腸幹細胞の腸上皮組織再構築能の解析を行う。マウスにヒト腸幹細胞を移植し、それらがマウスに生着するか否かを検証する。ヒト腸幹細胞の生着の有無はヒトの細胞特異的に反応する抗体を用いるか、ヒト腸幹細胞をGFPなどであらかじめ標識しておく。さらに、生着した部分における分化細胞マーカーや腸幹細胞マーカーの発現を免疫染色で調べる。生着した部分をFACSで単離し、マイクロアレイ解析を行うことで、生体の腸との比較解析を行う。
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