| 研究実績の概要 |
平成28年度は、温度勾配を駆動力とする物質輸送現象であるソーレー効果を利用した光学的な物質輸送センシング技術「ソーレー強制レイリー散乱法」を発展させ測定対象を拡大するための検討を行い、以下のような成果を得た。
(1) 3成分系測定技術開発とベンチマーク系測定による妥当性検証: 2成分系と比較して遥かに複雑となる3成分系における物質輸送現象の解明のための測定技術の開発を行った。構築した測定システムを用いて、3成分系ソーレー係数・熱拡散係数の参照値が存在するベンチマーク系(n-ドデカン+イソブチルベンゼン+1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)の測定を行い、測定装置や信号解析手法の妥当性を実験的に確認した。
(2) 3成分ポリマー溶液のソーレー効果センシング: 構築した測定システムにより、フィルム材料などに用いられるポリマーの酪酸酢酸セルロース(cellulose acetate butyrate)を2種類の有機溶媒(スチレン, 2-ブタノン(メチルエチルケトン))に溶かした3成分系のソーレー効果センシングを試みた。
(3) 水溶液系の測定に向けた検討: これまでソーレー強制レイリー散乱法で解析に適した信号を得ることが困難であった水溶液系の測定を行うため、水溶液系に適した加熱用レーザー吸収用の染料や加熱用レーザーの干渉縞間隔(拡散長に対応)などの実験パラメータ等について検討を行った。測定例が複数存在するエタノール水溶液の物質拡散係数、ソーレー係数の測定を行い、他手法による測定値と不確かさの範囲内で一致する結果が得られた。
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