研究課題/領域番号 |
16J02523
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
干場 大也 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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キーワード | 非線形トポロジー最適化 / 有限ひずみ弾塑性 / 熱・構造錬成解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,マルチスケール解析およびマルチフィジックス解析を組み込むことで,複雑な設計問題に適用可能な次世代のトポロジー最適化手法の枠組みを構築するものである.今年度は,昨年度までに構築した理論をプログラムに実装し,さらなる拡張を見据えての数値的検証を行った.この際,最適化収束計算の過程で,大変形と弾塑性材料に由来する複雑な非線形性によって,予想を超える著しい計算不安定性が確認された.この結果を受けて,本研究は土木分野での実用に耐えうる手法の開発を標榜していることもあり,上記の問題を回避するために必要な検証,あるいは理論の構築に主眼が置かれることとなった.これは非線形トポロジー最適化という領分において,未知かつクリティカルな研究課題である.以上の問題に対処すべく,昨年度構築した理論に加えて検討した内容は以下の通りである. 1. 母材部の挙動安定化のための構成則の採用 2. トポロジー最適化理論に即した安定化のための特殊要素の検討 3. 非凸最適化問題に有効とされる最適化アルゴリズムの検討 これらの成果は,構造最適化分野の現状において十分な新規性を有するものであり,その理論および結果については,2017年度および2018年度の学会で発表済みまたは予定である. また,対象を熱問題へ拡張するにあたって,その基礎的検討のため,ドイツ・ドレスデンへ短期間(8.6~8.31)の研究留学を行った.そこでは,自由エネルギーを定義する熱弾性ベースの熱-力学連成解析手法について学び,現地の研究者との議論を経てトポロジー最適化との整合性・拡張性についてなど有用な知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までに構築した理論をプログラムに実装し,さらなる拡張を見据えての数値的検証を行った結果,解の振動,不整合な剛性マトリックスや要素のつぶれなど,予想を上回る激しい数値不安定性が見られた.これは,厳しい大変形のもと,実際的な硬化挙動を含む弾塑性材料モデルを用いたことにより生じた最適化問題の非凸性,あるいは空隙-固体間を連続的に補完するトポロジー最適化の根本的な原理に由来するものと考えられる.また一方で,マルチスケール化を試みるためには,マクロ・ミクロそれぞれのスケールで異なる大変形弾塑性モデルを定義し,数値的手法でパラメータフィッティングを行う必要があるが,異方性弾塑性モデルの許容する有効なパラメータの制約下ではフィッティングの精度が得られにくいことが指摘されている.ゆえに,当初の計画通りマルチスケール化・マルチフィジックス化を推し進めていく上で,現時点で以上の課題を解決し,一定レベルの計算の安定性・精度を担保することは不可欠である. 以上の理由で,本来予定していたマルチスケール化およびそのパフォーマンスの検証に先立って,数値計算上の安定性の確保のための対策を優先せざるを得ない状況となった.しかし,この新しい研究目的をもってしても当該研究分野に置いては十分な新規性を有しており,ここで得られたいくつかの結果は評価すべき進捗であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
現状において,完全な計算安定性は得られていないが,検証によって手法を有効に活用できる適用範囲は明らかになりつつある.また,熱-力学連成解析についての拡張に関しても,現時点で理論上の基礎的検討は概ね完了している.これらの成果を踏まえて,マルチスケール化・マルチフィジックス化の両者について理論・手法を拡張し,数値計算例を含めたアウトプットによりこれまでの成果を総括する.
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